原子力産業新聞

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規制委 AI活用へ 開発費用を来年度予算案に盛り込む

09 Sep 2025

中西 康之助

AIを活用した審査業務の具体的な成果イメージ
©原子力規制委員会

原子力規制委員会は93日の委員長定例会見にて、来年度の概算要求等を公表。その中で、原子力発電所の安全審査の効率化に向けてAIの利用を促進すべく、新たにAIの調査や開発のための費用として6,000万円を、来年度予算案の概算要求に盛り込んだ。

概算要求の目的として規制委は、新規制基準に適合したプラントの改造工事や原子炉の建て替え等に伴い、審査業務量の増加が見込まれていることを理由に挙げた。審査業務にAIを導入することで、過去の審査実績との比較や、チャットによる書類の横断的確認、審査書案の作成支援等を行うことで、申請書の確認や審査資料の確認作業の効率化が見込まれる。

また、今年5月に成立した人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律において、「国は、行政事務の効率化及び高度化を図るため、国の行政機関における人工知能関連技術の積極的な活用を進めるものとする」と制定されたことを受け、急速な進歩を遂げている大規模言語モデル(LLM)をはじめとするAIを審査業務の支援に活用し、原子力発電所の審査業務全般の効率化を目指す。

規制委はAIの活用を段階的に実施する方針で、まず来年度から、職員のニーズやデータに基づき、審査業務のうちAIが有効に活用され得る業務分野を特定し、AIによる審査支援の実現可能性を探る。令和910年度には、調査結果を踏まえて、審査支援のためのシステムの設計・開発を行い、AIからのアウトプットの品質が要求レベルを上回るかどうか等を検証する。そして令和11年度には、システムの構築や運用マニュアル等の整備を行い、令和12年度以降のAIの導入を目指す。

規制委の山中伸介委員長は定例会見にて「米国でもAIが審査の効率化にかなり役立っていると聞いている」と述べ、「日本でも審査効率の改善にAIを活用していきたい」と導入への意志を示した。

記者からAI技術に具体的にどのような期待を持っているかを問われ、山中委員長は「モーターの音、コンクリートの打音などをAIに記憶させて異常診断に使うケースなどを想定している。実際に使わないと分からない部分もあるが、現状と安全上同じレベルを維持しながら、審査時間を短縮することを望んでいる」と応えた。

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