原子力産業新聞

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規制庁 原子力施設上空の飛行区域制限の設定に向け議論を加速

28 Nov 2025

中西 康之助

原子力施設付近上空における航空機の飛行を確認した場合の連絡概要 ©原子力規制委員会

原子力規制委員会は1126日の定例会合で、原子力施設上空および周辺空域の設定に向け、関係省庁との協議状況や今後の検討方針について議論した。併せて、原子力施設付近を飛行する航空機に関する事業者からの情報提供手続きを明確化し、運用を強化する方針を示した。

現在、原子力施設付近で航空機の飛行が確認された場合、事業者は、関係省庁へ情報提供する取り決めがあり、昭和40年代から運用されてきた。また、国土交通省が発行する航空路誌(AIP:乗務員に提供される航空機の運航に必要な情報)には、原子力施設の位置や概要が掲載され、航空関係者が参照している。

しかし近年、原子力施設の安全確保(防災訓練や緊急時対応等)や救命救護、警備活動といった業務上必要な飛行以外にも、ヘリコプター等による不必要な飛行事例の報告が増加しており、リスク低減に向けた新たな対応が求められていた。

規制庁は今回、①飛行状況を写真や動画で記録し証拠として保存、②統一様式による報告、を事業者に求める方針を示した。提出された情報は規制庁から関係省庁に共有され、業務上必要でない飛行であれば関係省庁が当該関係者に注意喚起を実施する。また、規制庁は公表した情報について、後に業務上必要な飛行と確認されても取り下げない方針を明らかにした。

飛行制限区域を設定するにあたり、「航空法第80条」の位置づけが論点となっている。

これまで、2012年の省庁打ち合わせでは、「第80条は機内被ばく防護を目的とした規定であり、一般的な原子炉上空の飛行禁止には適用できない」とされていた。しかし、2016年のG7伊勢志摩サミットを契機に、警備上の理由から飛行制限区域設定の必要性が高まり、関係省庁との協議を重ねた結果、警備当局からの要請を受けて飛行制限区域を設定(G7広島サミット・東京五輪等)するなど、柔軟な対応へと転じてきた経緯がある。

今回の会合では、国土交通省航空局が安全上および警備上の観点から、原子力施設上空に行制限区域を設定できるとの立場を示し、関係省庁の要請を踏まえた具体的検討を進める方針が説明された。

また、「原子力施設やその付近上空」の範囲について、高さや対象外となる航空機など詳細は、今後検討していく。現在、原子力発電所の敷地と、その周囲約300メートルを「敷地周辺」と位置付けており、前述のAIPにおいては範囲のみ示され、高さの規定は無い。そのため、今後飛行制限を設ける場合、高度基準の検討が必要になる。規制庁では、航空機特性や気象条件を考慮しながら、より余裕ある距離の確保が望ましいとしている。

今回の議論で対象となるのは、有人航空機であり、ドローン(無人航空機)は別法令で規定されているため本制度には含まれない。

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