原子力産業新聞

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福島県甲状腺検査評価部会、UNSCEAR報告書に関する論文も紹介

16 Jun 2020

WEB会議で議事を進める鈴木部会長(コラッセふくしまにて)

福島県「県民健康調査検討委員会」の甲状腺検査に関する評価部会が6月15日に開かれ、3巡目検査(2016~17年度)の結果が報告された。甲状腺検査は、長期的観点から放射性ヨウ素の内部被ばくによる甲状腺がんから子供を見守るため2011年より実施されている。

震災当時に県内に在住していた18歳以下、および震災後に生まれた約34万人を対象として約22万人(64.7%)に実施された3巡目検査で、「悪性腫瘍ないし悪性の疑い」となった割合は実施者数全体に対し0.01%だった。同検査での地域分類、「避難区域等」(田村市、南相馬市、伊達市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村)、「中通り」(福島市など、26市町村)、「浜通り」(いわき市、相馬市、新地町)、「会津地方」(会津若松市など、17市町村)の地域別にみると、「浜通り」が最も高く0.03%だった。因みに、日本の甲状腺がんの罹患率(2015年)は、人口10万人当たり9人(0.009%)程度で、女性では同13人(0.013%)程度と男性と比べて高い傾向にある。

今回の検査結果に対し、福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センターの大平哲也氏は、「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」(UNSCEAR)により評価された甲状腺吸収線量と小児甲状腺がんとの関連に関する論文を紹介。それによると、2巡目検査(2014~15年度)の受診者を対象とした解析結果から、「甲状腺吸収線量が低い地域から高い地域に行くにしたがって、甲状腺がんの発見率が高くなるというような関連性は、いずれの年齢でも見られなかった」としている。その上で、UNSCEARによる被ばく線量評価には不確定要素が多いことなどをあげ、3巡目検査以降のデータを用いて引き続き評価を行う必要があると指摘。

UNSCEARは2013年報告書(2014年4月公表)の中で、「福島第一原子力発電所事故により日本人が生涯に受ける被ばく線量は少なく、その結果として今後日本人について放射線による健康影響が確認される可能性は小さい」と結論付けている。

部会長の鈴木元氏(国際医療福祉大学クリニック院長)も自身が参画する研究チームの論文を紹介。避難指示が出された7市町村の子供たちの行動調査票をもとに2011年3月11~26日の線量評価を解析し、1歳児の甲状腺被ばく(等価線量)に関し「UNSCEAR2013年報告書の評価値より大分小さくなった」としている。鈴木氏は、避難シナリオを見直し線量評価の精緻化を図った同研究の意義を述べ、年度内に見込まれるUNSCEAR報告書のアップデートに向けて、「日本の研究者たちが、何が原因で過剰評価となったか、データとして示していくべき」と強調した。

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