原子力産業新聞

国内NEWS

茨城県議委員会、東海第二再稼働の県民投票条例案を否決

19 Jun 2020

県民投票条例案は否決された(インターネット中継)

茨城県議会は6月18日、連合審査会(防災環境産業委員会・総務企画委員会)を開き、日本原子力発電東海第二発電所の再稼働の賛否を問う県民投票条例案を審議。防災環境産業委員会は採決を行い、反対多数で否決となった。今回の審査結果は23日の県議会本会議に報告され採決となる運び。

「いばらき原発県民投票の会」共同代表の鵜澤氏

同条例案は、「いばらき原発県民投票の会」が約87,000人の署名を集め、地方自治法に基づく請求により議会に提出されたもので、同会共同代表の鵜澤恵一氏は、「東海第二の再稼働は茨城県民全体が当事者」と、県民投票を実施する意義を主張。また、大井川和彦知事は、6月8日に開会した県議会への条例案提出に際し、県民の意見を聴く方法について「慎重に検討していく必要がある」との談話を発表している。

住民投票を巡る現状について説明する茨城大・古屋氏

今回の審査会に参考人として招かれた茨城大学人文社会科学部教授の古屋等氏によると、近年、いわゆる「NIMBY」施設に関する住民投票は、沖縄県の辺野古米軍基地に係る県民投票で前例があるが、原子力発電所については宮城県、静岡県、新潟県など、いずれも議会で条例案が否決されている。同氏は地元の立場から、「国策である原子力発電は国が責任を持って判断すべき」としたほか、県民の意見を聴く方法に関して「原子力の先進県としてできる限り独自性を出すべき」などと意見を述べた。

JCO事故を踏まえた情報発信・対話活動について説明する東海村・山田村長

また、東海村村長の山田修氏は、「東海第二の再稼働について、住民の意見をどう把握するか非常に悩み模索している最中」と述べた上で、1999年のJCO事故以降実施している安全懇談会や住民とのふれあい活動など、情報発信・直接対話の取組を紹介。さらに、松江市で原子力をテーマに行われた住民主体の「自分ごと化会議」を例に、「まずは関心を持ってもらい冷静に議論してもらう」重要性を強調した。

この他、資源エネルギー庁政策統括調整官の覺道崇文氏、原子力規制庁安全規制管理官(実用炉審査)の田口達也氏らが、それぞれエネルギー基本計画における原子力の位置付け、東海第二発電所の新規制基準適合性審査の経緯を説明。同発電所は2018年に、1978年の運転開始から60年間の運転期間延長が認可されている。

参考人からの意見聴取を受け、討論に立った委員はいずれも、県民投票条例の制定に向けて集められた多数の署名を「重く受け止める」としたが、議会で多数を占める会派のいばらき自民党他、県民フォーラム、公明党は、「投票結果の取扱いに関する準備が不十分」、「投票率が低いとかえって不信感を招く」、「投票時期によっては次期県議会の拘束につながる」など、現段階での投票実施は「時期尚早」と反対意見を述べた。

東海第二発電所の安全性向上対策工事の終了時期は2022年12月が予定されており、また、広域避難計画が策定されている自治体は県内5市町に留まっていることなどから、今回の審査会を通じ、安全性の検証や防災対策に関わる情報提供の困難さや、県民の熟議、「○×形式」で民意を問う方法の是非を巡り多くの意見が交わされた。

cooperation