原子力産業新聞

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「ICEF2020」開催、革新的環境イノベーションでSMR開発も

12 Oct 2020

女性の視点から原子力の必要性を述べるコーホラ氏(インターネット中継)

世界全体のCO2削減(ビヨンド・ゼロ)に向けて革新的環境イノベーションを通じた「環境と成長の好循環」を目指し国内外のリーダーらが話し合う一連の国際会議「東京・ビヨンド・ゼロ・ウィーク」が10月7日に開幕。9日までに、「ICEF2020」(Innovation for Cool Earth Forum 2020)、「RD20」(Research and Development 20 for clean energy technologies)、「TCFDサミット2020」(Task Force on Climate-related Financial Disclosures Summit 2020)が開催された。

いずれも感染症対策のためオンライン形式での開催となり、先陣を切った「ICEF2020」には、80か国・地域の政府、国際機関、産業界、学術界から1,300人以上が参集。8日には、9月28日より先行開催された分科会(水素製造技術と都市利用、原子力・核融合、デジタル技術の進歩とエネルギー技術の活用など、10テーマ)、続く2日間の本会議による議論を通じステートメントを取りまとめ発表した。

ステートメントでは、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う世界の状況について「気候変動によってもたらされる地球規模の脅威のリスクを強調している」と危惧した上で、気候変動の取組におけるイノベーションの重要性を改めて明記。原子力発電に関しては、「ベンチャー企業を含む様々な国の企業が、小型モジュール炉(SMR)を含む新型原子力技術や柔軟な原子力システムの研究開発を着実に進めている」との現状認識のもと、安全を確保し開発を加速するよう支援すべきと各国政府に対し求めている。

本会議には、リチウムイオン二次電池に関する先駆的な研究で2019年にノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏(産業技術総合研究所ゼロエミッション国際共同研究センター長)も登壇。同氏は、「地球環境問題は一つの技術で解決できるものではない」と、気候変動への対応に向けて技術の融合が重要なことを強調。また、環境性、経済性、利便性の3つを必須要素にあげ、「不可能を可能にすること」を目指し、現在も研究開発に取り組んでいるとした。蓄電池を活用した次世代エネルギー管理システムや、「ICEF2020」で特に注目された水素利用については、「RD20」でも技術的な議論が行われた。

今回ICEFのまとめをイメージしたインフォグラフィックスを示し閉会挨拶を述べる田中氏(インターネット中継)

今回の「ICEF2020」は、ジェンダー平等に焦点を当てており、登壇するパネリストの概ね半分に女性を選んでいる。その中で、エイヤ-リイタ・コーホラ氏(元欧州議会メンバー)は、「女性活躍とクリーンエネルギーイノベーション」と題するセッションの中で、かつて原子力に対し懐疑的であったがその必要性を認識するに至った経緯を披露。同セッションのモデレーターを務めたICEF運営委員長の田中伸男氏(元IEA事務局長)は、「気候変動の影響をより強く受けるのは女性」、「社会的不平等の課題を皆で考える必要がある」などとして、女性のエンパワーメント強化に向けた議論の活発化を期待した。

「東京・ビヨンド・ゼロ・ウィーク」では続く12日の週も、LNG産消会議、カーボンリサイクル産学官国際会議、水素閣僚会議が開催される。

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