原子力産業新聞

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新潟県の技術委員会が福島第一原子力発電所事故で検証結果をまとめる

27 Oct 2020

会見を行う新潟県・花角知事(インターネット中継)

新潟県の「原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」(座長=中島健・京都大学複合原子力科学研究所副所長)が10月26日、福島第一原子力発電所事故に係る検証結果を取りまとめ、花角英世知事に報告を行った。

2012年に当時の泉田裕彦知事からの要請を受け、柏崎刈羽原子力発電所の安全に資することを目的として、現地視察や、4事故調(民間、政府、国会、東京電力)報告書から課題を抽出したディスカッション、東京電力へのヒアリングなどを通じ検証を進めてきたもの。事故から得られた課題・教訓を、(1)地震対策、(2)津波対策、(3)発電所内の事故対応、(4)原子力災害時の重大事項の意思決定、(5)シビアアクシデント対策、(6)過酷な環境下での現場対応、(7)放射線監視設備・SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワーク)システム等のあり方、(8)原子力災害時の情報伝達・発信、(9)新たに判明したリスク、(10)原子力安全の取組や考え方――の10項目に整理。

地震対策の関連では、水素爆発シミュレーションも実施し、「1号機非常用復水器(IC)の損傷原因が地震動による可能性も否定できないことを確認した」などと、事故調により見解に相違があった事象についても深堀し検証。「新たに判明したリスク」を踏まえた教訓としては、「使用済燃料プールのリスクに対応する安全基準を設けること」、「複数号機が同時に事故を起こしても、対応できる体制を構築すること」、「代替設備を用意するとともに、規格の統一により汎用性を向上させること」をあげている。

技術委員会座長の中島氏は、今回の検証結果をまとめた報告書の冒頭で、柏崎刈羽原子力発電所における安全対策の確認に資する趣旨とともに、「広く原子力発電所の安全性向上に貢献できれば」と、事故から得られた知見の水平展開にも言及。また、結びでは、「安全を確保するのは、最後は人だ」として、国や東京電力に対し教育・訓練を通じた人材育成の重要性を強調している。

花角知事は10月27日の定例記者会見で、「『色々な可能性を排除せずに課題としてとらえる』という姿勢で議論が行われ、計133もの課題・教訓が抽出された」などと語り、8年間にわたる議論の成果を認識。新潟県では現在、福島第一原子力発電所事故に関し、「事故原因」、「健康と生活への影響」、「安全な避難方法」の3つの検証を進めており、このうちの一つに結論が出た格好となった。

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