原子力産業新聞

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国立環境研、霞ヶ浦で放射性セシウム濃度の季節変動を調査

26 Nov 2020

放射性セシウム濃度の季節変動のイメージ(環境研発表資料より引用、成層:水温や塩分等によって表水層と深水層に密度の違いが生じ混じり合わなくなる現象)

国立環境研究所は11月24日、茨城県の霞ヶ浦(西浦)で行った観測から、福島第一原子力発電所事故後、湖水中および魚類の放射性セシウム濃度が季節により変動しながら、徐々に低下していることを明らかにしたと発表した。〈環境研発表資料は こちら

同研究所の生物・生態系環境研究センター他による共同チームは、事故後5年間にわたり、霞ヶ浦の3か所で毎月の水温や溶存酸素量などの環境測定に加え、季節ごとに表層水(水深2mまで)の採水を行い、湖水中に含まれる溶存態(水中にイオンの形で溶け込んでいる状態)の放射性セシウムの濃度測定を実施。調査の結果、いずれの地点とも、夏の表層水温の上昇と底層(湖底から10cm程度)の溶存酸素濃度の低下が確認されたほか、湖水中の放射性セシウム濃度については、事故から1~2年の間に大きく低下した後、「夏のわずかな上昇、秋から春にかけての低下」という季節変動を繰り返しながら徐々に下降していることがわかった。湖水中の放射性セシウム濃度の変動に関し要因を分析したところ、夏に底層の溶存酸素濃度が低下することに伴い、底泥からの放射性セシウムの溶出が起きていることが示唆された。

さらに、共同チームでは、霞ヶ浦において底泥からの溶出により上昇した湖水中の放射性セシウム濃度が魚類に与える影響を合わせて調べるため、ワカサギについて分析。その結果、事故直後から出荷規制値を上回っておらず、1年から1年半後にかけて急激に低下し、以降も徐々に下降していることがわかった。ここでも、湖水と同じく、夏に放射性セシウム濃度がわずかに高くなる季節変動を確認。フナ類でも同様の傾向がみられたことから、底泥から溶出した放射性セシウムが食物網を通じて魚類に取り込まれている可能性を示唆するものとしている。

今回の研究成果に関し、共同チームでは、淡水魚類の長期的な放射能影響の解明につながるほか、放射性セシウム濃度の季節変動を考慮することで、より確度の高い水産物の出荷制限対応が可能となるとしている。

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