原子力産業新聞

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原子力白書で廃止措置を特集、将来に向けて技術の蓄積は「大きな資産」

02 Sep 2019

原子力委員会は9月2日、「平成30年度版原子力白書」を決定した。3日に閣議配布となる運び。

今回の白書では「原子力施設の廃止措置とマネジメント」を特集。国内において、原子力発電所24基(福島第一1~6号機を含む)が廃止措置中または廃止決定となっているほか、日本原子力研究開発機構でも約半数の研究開発施設の廃止措置を進める計画を発表するなど、廃止措置が本格化しつつある現状をとらえ、海外の先行事例を紹介し参考となる教訓を抽出した。

白書では、「核燃料や放射性物質を取り除いて、そのリスクと管理負担を低減する」と、原子力利用における廃止措置の位置付けを改めて述べ、「培ってきた知識・技術・人材を活用しつつ、原子力施設の廃止措置に対応する新しいステージに進んでいくことが必要」と、次段階のスタートとしての重要性を強調。国内で廃止措置事業の実施を通じ技術やシステムを蓄積していくことは、「将来的な世界での原子力施設の廃止措置を考えた際に、わが国の大きな資産となる」などと展望した。

今回白書の編集に当たった内閣府の担当者は、発生する放射性廃棄物の処理も含め、原子力施設の廃止措置は数世代にわたる長期事業となりうることから、「特に若い世代にも関心を持ってもらいたい」と話している。

諸外国の廃止措置としては、米国、ドイツ、フランス、英国の事例を紹介し、参考とすべき教訓として、「全体的な効率的作業の計画」、「関係者、特に規制機関との対話」、「放射性廃棄物の管理と技術開発」、「サイト周辺住民等、関係者との信頼構築」をあげた。

例えば、ドイツのシュターデ原子力発電所(2003年閉鎖)の原子炉容器解体に用いられた水中切断・解体工法に関して、他の複数プラントにも適用される見通しをあげ、「技術の横展開により効率的な廃止措置作業を実施できる」と評価。同発電所の非原子力部分の解体も含めた廃止措置完了は2023年の見込み。さらに、ドイツでは、クリアランス制度を整備し放射性廃棄物の発生量を可能な限り抑制する取組を進めており、「Q&Aウェブサイト」を通じた理解促進に努めていることもあげられた。

この他、コスト効率・工程マネジメントについて、米国ノースター社を例に廃止措置専業事業者による一元管理・ノウハウの蓄積が有効であることを示し、信頼構築に関しては、フランスの「CLI」(地域情報委員会)によるコミュニケーション活動をあげ、「長期にわたって地域経済に影響を与える廃止措置事業に関して、地域住民や地元産業への配慮も重要」などと述べている。

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