原子力産業新聞

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エネ研が2021年度のエネルギー展望示す

25 Dec 2020

日本エネルギー経済研究所は12月23日、2021年度の国内エネルギー展望に係る研究について発表した。新型コロナウイルス感染症は「完全終息はせず、防疫対策が継続し徐々に改善」、世界経済は「戦後最低の成長率となった2020年より5.2%増となり、コロナ以前をやや上回る」、化石燃料輸入額は「需要減少で2020年度は前年度比38.4%減、2021年度は需要回復・価格上昇で同15.4%増となるも、低水準」などを主な前提とした「基準シナリオ」を想定し試算・分析を行ったもの。

それによると、一次エネルギー国内供給は、コロナの影響による製造業の減産や運輸業の輸送量減少に伴い、2020年度は前年度比5.5%減と落ち込みを見せるが、2021年度は産業活動の回復により同2.6%増へと上向く見通し。

「基準シナリオ」で、原子力発電については、既に再稼働した9基に加え、2021年度末までに新たに4基程度の再稼働を予想。一方で、テロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の完成遅れなどにより、2021年度中に4基が順次停止し、同年度内に発電を行うプラントは9基と見込んでいる。原子力による発電電力量は、2020年度の442億kWhから2021年度には797億kWhへと上昇。再生可能エネルギーと合わせた非化石電源の比率は、2020年度にわずかに縮小するものの、2021年度には拡大し、東日本震災以降で初めて30%を超える見通し。また、エネルギー起源CO2排出量については、前年度比8.8%減が見込まれる2020年度と比較し、2021年度には化石燃料の需要増に伴い1.6%増の9.6億トンとなると試算。コロナ以前と比べたCO2排出量減少に関しては、「一時的な経済低迷によるエネルギー需要減少の影響」と分析し、経済活動を犠牲にしないCO2排出削減策の必要性を示唆している。

今回の研究では、原子力発電に関し、2021年度内の停止を見込んだ4基が停止しない「高位ケース」、新たな再稼働を見込んだ4基が再稼働しない「低位ケース」も想定し、「基準シナリオ」との比較を行っている。それによると、化石燃料輸入総額は、「高位ケース」で「基準シナリオ」比1,000億円減、「低位ケース」で同900億円増と、CO2排出量は、「高位ケース」で同700万トン減、「低位ケース」で同600万トン増となるなどと分析。これを受け、「2021年度以降も特重施設完成期限を迎えるプラントが増えることから、個々のプラントに応じた適切な審査を通じた再稼働の円滑化がわが国の3E(安定供給、経済効率性、環境適合)にとって重要」と指摘している。

なお、原子力規制委員会の規定に基づき、2021年度内に特重施設の設置期限を迎えるのは、再稼働に至っていない関西電力高浜1、2号機、同美浜3号機の3基と、四国電力伊方3号機の計4基。特重施設の設置は再稼働に必要な規制要求だが、プラント本体の工事計画認可から5年間の猶予が与えられている。

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