原子力産業新聞

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千葉大で高レベル放射性廃棄物の地層処分をテーマにディベート試合

22 Jan 2021

社会問題をテーマとしたディベートを授業に取り入れている千葉大・藤川教授

千葉大学で1月19日、高レベル放射性廃棄物の地層処分をテーマとしたディベート試合が行われた。

同学教育学部の藤川大祐教授が担当する講座「ディベート教育論」の一コマで実施されたもので、「日本は高レベル放射性廃棄物の地層処分計画を撤廃し、地上での管理を義務づけるべきである」を論題とし、学生チームが賛否それぞれの立場から論戦した。

ディベートは、ある論題の是非を巡って肯定側と否定側とに分かれルール(制限時間など)に従って論戦し、論証の強さをもとに第三者である審判が勝敗を決める討論ゲームで、言語技術を包括的にトレーニングする手法として授業にも取り入れられている。千葉大教育学部では、2012年度から「ディベート教育論」の中で、地層処分をテーマとして取り上げており、同学部附属中学校の校長も務める藤川教授は、「現代的課題には答えの決まっていないものも沢山あり、これからの教育では扱っていく必要がある」と、意義を強調している。ディベート試合に参加した学生らは事前に原子力発電環境整備機構や日本原子力研究開発機構の職員からレクチャーを受けるなど、準備を行った上で試合に臨む。肯定側・否定側のチーム分けは、学生の原子力政策に対する見方とは関係なくランダムに振り分ける。今回は、感染症対策のためオンラインでの実施となった。

ディベート試合で、「分離変換技術を用いて放射性廃棄物の有害度を低減し、既存の原子力発電所の敷地を拡大し保管する」と主張する肯定側(地上管理)は、メリットとして、「周辺住民の理解が得られ処分計画が進行しやすい」、「次世代に先送りせず責任ある処分ができる」ことをあげた。

これに対し、否定側(地層処分)は、論題の示す地上管理のデメリットとして、「火災や津波などの災害による影響は深刻である」、「地層処分に比べ実現性は著しく低い」ことを主張した。

ディベート試合を終えインタビューに応じる安部さん

続いて、肯定側、否定側が、相手方の主張に対し反論。原子力発電所敷地内での地上管理の安全性に関しては、それぞれ「原子力発電所立地点は津波被害の恐れがある」、「災害発生時における対応が容易」などと論戦。地層処分の実現可能性については、フィンランドの進捗状況や北海道寿都町・神恵内村の文献調査応募が根拠としてあげられ、放射性廃棄物処理・処分の負担を軽減する分離変換技術については、大強度陽子加速器施設「J-PARC」による研究レポートも引用された。藤川教授は、学生らによる判定票も集計した上で、「判断は難しいところ」としながら肯定側に軍配を上げた。

ディベート試合終了後、否定側チームリーダーの安部真純さん(文学部1年)は、「始めはまったく知識ゼロだった。チームで話し合いながら勉強を進め、地層処分に関する新聞記事にも目を通すようになった」などと、報道陣のインタビューに答えた。

※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。

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