原子力産業新聞

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東京電力「原子力改革監視委員会」、事故を踏まえた原子力安全改革の取組を評価

28 Jan 2021

米国よりオンラインで会見に臨むクライン委員長

東京電力の外部有識者による諮問機関「原子力改革監視委員会」(委員長=デール・クライン氏〈元米国原子力規制委員会委員長〉)は1月27日に会合を開き、同社が2013年より取り組んでいる「原子力安全改革プラン」について総括的にレビューした答申案を取りまとめた。

同プランに基づき東京電力は、「安全意識の向上」、「技術力の向上」、「対話力の向上」を柱に継続的改善に取り組んでおり、進捗状況を四半期ごとに公表している。

答申案では、「安全最優先・ガバナンス強化・リスク管理の強化」、「学ぶ姿勢・技術力の強化」、「緊急時対応力の強化」、「リスクコミュニケーションの強化」、「内部監視機能の向上」、「被ばく線量の低減」の個別分野ごとに所見を述べた上で、「8年以上にわたり原子力安全改革に取り組み、組織が正しい方向に向かって着実に進捗している」と評価。学ぶ姿勢の浸透や技術力の維持に関しては、「運転を経験していない職員が増える中、実操作の経験を付与しながら訓練・研修を行い、着実な運転員の力量向上に努めている」としている。リスクコミュニケーションについては、「職員自らが地域の声に触れて感度を磨き業務に反映させる」ことを期待。柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けて、安全監視機能の重要性も述べ、専門性を有する人材の強化なども提言している。

会合終了後、記者会見(オンライン)に臨んだクライン委員長は、まず、2020年8月に逝去したバーバラ・ジャッジ同委副委員長への追悼の意を述べ、今後の委員会体制に関し、ジャッジ氏が取り組んできたコミュニケーション・安全文化に通じた女性の専門家の人選を進めるとともに、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働を見据え、技術系の適任者を検討している考えを明らかにした。

また、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関しては、「安全の問題よりも感情の問題がある」として、政府、東京電力、アカデミアなどが安全性について丁寧に説明を行い人々の不安が払拭されるよう努めるべきと強調。

福島第一原子力発電所事故から間もなく10年を迎える現状下、答申案は「事故を経験していない社員が増える」などと指摘。これに関し、クライン委員長は、「東京電力は事故の当事者として事故から学んだ教訓を広く発信し、原子力の安全性向上に貢献していくことが重要」と、事故の反省と教訓を忘れてはならないことを改めて述べた。

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