原子力産業新聞

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原産協会・新井理事長が会見 「第54回原産年次大会」など紹介

08 Apr 2021

原産協会の新井史朗理事長は4月7日、記者会見を行い、13、14日に開催される「第54回原産年次大会」(東京国際フォーラムよりオンライン配信)について紹介した。

今回は「コロナ禍の世界と日本-環境・エネルギーの課題と原子力」がテーマ。コロナ禍の影響を含め、地球規模で人々が直面する課題(変化する世界情勢・経済の変化、気候変動、エネルギー・原子力利用)を俯瞰。また、事故から10年が経過した福島第一原子力発電所廃炉の現状と福島復興を展望するとともに、昨秋より本格的に検討が開始された次期エネルギー基本計画を念頭に、あるべき日本のエネルギー・原子力の課題について考える。

原産年次大会は、新型コロナウイルス感染症による影響を考慮し2020年は中止となった。新井理事長はまず、2年ぶりの開催となる今回大会について「海外の非常にハイレベルな方々の登壇も適うこととなった」と、オンライン併用による開催のメリットを強調。今回のテーマに関し、昨今のエネルギー安定供給を巡り、「世界的なパンデミックにより、エネルギーにおけるサプライチェーンの課題がクローズアップしてきた」などと、国際情勢の変化を概観するとともに、「わが国は化石燃料の大部分を海外からの輸入に頼っており、一次エネルギー自給率は約12%と、先進国の中でも特に低い」と、日本の現状を改めて述べた。さらに、今冬の電力需給ひっ迫に関し、「特に厳しかった1月6~12日の間、全国で稼働していた原子力発電プラントはわずか3基だった」と振り返り、原子力の電力需給における位置付けを考える契機となったことを強調。原子力発電の環境適合性については、「日本の年間CO2排出量は約11億トン。100万kW級のプラント1基が稼働すれば年間310万トンのCO2を削減できる。2050年カーボンニュートラル実現に不可欠」とした上で、今回の年次大会を通じ「脱炭素社会の実現と持続的発展に貢献する原子力の価値について国民の皆様の議論が深まることを期待する」と述べた。

次期エネルギー基本計画に関する記者からの質問に対し、新井理事長は「安全を大前提とした3E(安定供給、経済効率性、環境適合性)の観点のもと、将来にわたって一定規模の原子力発電を利用していくというメッセージを発信して欲しい」としたほか、再稼働が進まぬ状況下、「既存炉の徹底活用」の重要性を繰り返し強調。また、原子力イノベーションに関し、先般の日揮ホールディングスによる米国ニュースケール社の小型モジュール炉(SMR)開発への出資について触れ、「日本の企業が海外と連携することは技術力の維持にもつながり喜ばしいこと」と、歓迎の意を述べた。

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