原子力産業新聞

国内NEWS

環境省、除染で発生する土壌の減容・再生利用の理解に向け「対話フォーラム」開催

24 May 2021

環境省は5月23日、福島第一原子力発電所事故後の除染に伴い発生した土壌の減容・再生利用に関し理解醸成を図る対話フォーラム「福島、その先の環境へ。」を都内で開催した。今回、一般参加者は、感染症対策のためオンライン参加となったが、小泉進次郎環境相出席のもと、1,000人以上が参集し意見・質問も多く寄せられた。司会はフリーアナウンサーの政井マヤ氏。

中間貯蔵施設を上空から

福島県内で発生した除去土壌については、中間貯蔵施設で安全に集中的に管理・保管され、貯蔵開始後30年以内に県外での最終処分を完了するよう、減容・再生利用の取組が進められている。同施設の全体面積は約1,600haで渋谷区の面積に相当。立地する大熊町の吉田淳町長、双葉町の伊澤史朗町長は、今回のフォーラム開催に際して寄せたビデオメッセージの中で、それぞれ「地権者の数だけ様々な苦悩や想いがある」、「町民の怒り、悲しみ、苦しみに満ちた表情は今でも忘れることはできない」などと、施設の受入れに際し苦渋の判断をした経緯を振り返っている。

除去土壌再生利用に係る安全性確保について説明する高村氏

除去土壌の再生利用については、飯舘村長泥地区における再生資材を用いた農地造成、そこにおける食用作物栽培などの実証事業が行われているほか、2020年には大熊町に技術開発を行う「技術実証フィールド」も整備された。一方で、同年に環境省が実施した調査によると、この県外最終処分のことを「聞いたことがない」または「聞いたことはあるが内容は知らない」という人が、福島県外で約8割、県内でも約5割に上っている。除去土壌の再生利用に向け、技術開発戦略検討会の委員を務めている長崎大学原爆後障害医療研究所教授の高村昇氏はフォーラムで、「安全性の確保が大前提」とした上で、放射能濃度基準値(原則8,000ベクレル/kg以下)を遵守し覆土などによる遮蔽を行うという基本的な考え方を説明した。

小泉環境相、大熊町のイチゴと双葉町のタオルを前に福島復興・日本再生への意欲を示す

小泉環境相は、幼少期の箕輪スキー場(猪苗代町)への家族旅行に始まり東日本大震災以降は政治家として復興に関わってきた福島への想いを振り返り、除去土壌の県外最終処分に関し「30年の約束を福島県の皆様と結んでいる」重みを改めて述べた上で、「再生利用の案件を創り出していく」必要性を強調。また、「福島第一原子力発電所から電気を送ってもらい、首都圏の生活が成り立っていたことをもう一度思い返し、『風評加害者』にならないよう一人一人が想いを持ってもらいたい」とも語った。

除去土壌の最終処分に向けた国民理解に関し、東京大学大学院情報学環准教授の開沼博氏は、社会学の視点から、いわゆる「迷惑施設」の立地で議論される「NIMBY」(Not In My Back Yard、必要なのはわかるが自分の家の裏庭には作らないで欲しい)の問題があることなどを述べ、「事実の共有が第一歩」と強調。

カンニング竹山さん、「福島の魅力」体験をPR

今回のフォーラムには、タレントのカンニング竹山さん、なすびさんも登壇。環境省は対話フォーラムを今後全国各地で開催するとしているが、SNSや地元との交流を通じ福島の復興を支援しているカンニング竹山さんは、討論番組での経験から「感情のぶつかり合いで議論にならないことも多い。相手のこともじっくり聞くようにすべき」と主張。環境省の「福島・環境未来アンバサダー」として福島の環境再生に関する情報発信で活躍するなすびさんは、「これからも福島県民の目線で語っていきたい」と意欲を示した。

また、学生参加として新潟大学理学部に在学する遠藤瞭さんらが招かれ発言。大熊町出身の遠藤さんは、廃炉に関する合意形成を身近な問題ととらえ、除去土壌についても市民とともに考える重要性を述べたほか、「将来は福島第一原子力発電所の廃炉に携わりたい」と語った。

※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。

cooperation