原子力産業新聞

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規制委と電力の原子力本部長らが意見交換、核物質防護問題など

10 Jun 2021

意見交換に臨む規制委幹部(上)とオンライン出席の電力・ATENA(インターネット中継)

原子力規制委員会と電力会社の原子力部門責任者らによる意見交換会が6月10日に行われた。規制委員会からは更田豊志委員長、山中伸介委員、伴信彦委員(進行役)が、電力側からは中部電力、東京電力、関西電力、九州電力の本部長クラスの他、原子力エネルギー協議会(ATENA)の門上英理事長らが出席。東京電力の核物質防護事案を踏まえた取組や原子力発電プラントの長期サイクル運転に係る技術的課題などについて意見が交わされた。〈配布資料は こちら

東京電力柏崎刈羽原子力発電所におけるIDカード不正使用、核物質防護機能の一部喪失が発覚し、規制委員会は4月に是正措置命令を発出。東京電力では、外部専門家による評価・指導を受けるとともに、他業界・海外の良好事例も積極的に取り入れるなど、核物質防護業務の抜本的改善を図ることとし、6月2日には社外委員のみで構成される「核物質防護に関する独立検証委員会」を設置した。

意見交換会では、電力会社を代表し、関西電力原子力事業本部長の松村孝夫氏が東京電力の核物質防護事案を踏まえた業界全体の取組について説明。同氏は、事業者による核物質防護関連業務について、「『関連情報を他社に開示できない・他社に聞けない』との思いから、自社の閉じた世界で業務が実施されてきた」などと、一連の事案の背景にあった要因を述べた上で、改善に向けて、徹底した情報管理のもと、事業者間相互レビューを各発電所で順次実施し、12月を目途に完了させるとした。中部電力原子力本部長の伊原一郎氏も、発電所長を務めた経験を踏まえ、「『井の中の蛙』だった。もう一度足元から見直していきたい」として、安全性向上の取組と同様にCAP(通常と異なる状態を低いしきい値で確実に収集するプロセス)も取り入れて改善に努めていく考えを強調。

規制委員会では6月9日の定例会合で核物質防護に係る記録文書の保存期間について議論されたところだが、更田委員長は、電力からの説明を受け、「われわれにも学ぶべきこと、反省事項があった」と自省。

また、長期サイクル運転導入については、松村氏とともに、ATENAの玉川宏一理事も取組状況を説明。原子力発電プラントの運転サイクル(定期検査の間隔)は、法令上、13か月以内、18か月以内、24か月以内の3区分が規定されており、現在、国内のプラントはすべて13か月以内となっているが、海外では18か月以上の運転サイクル導入も進められている。ATENAでは、米国の80年運転の取組や国内外の経験劣化事象に関する最新知見を踏まえながら、継続的に技術課題の整理を進めており、2021年度下期を目途に技術レポートを取りまとめた上で、規制委と技術的な意見交換を行いたいとした。更田委員長は、炉心の安全解析の要否などに触れながら、意見交換に前向きな姿勢を示した。

ATENAによる技術的取組に対し、プラント審査を担当する山中委員は検査の高度化に関して、更田委員長はプルサーマル発電の進展を見据えMOX燃料の経年化に係る検討をそれぞれ要望。個別の課題に関しては今後、実務レベルの意見交換会で議論されることとなる。

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