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オランダの新政権、連立合意文書に原子力発電所の新設を明記

16 Dec 2021

ボルセラ原子力発電所©EPZ

オランダで今年3月に議会選挙が行われて以降、連立協議を続けていた政府の主要4党は12月15日、新政権としての2025年までの政策方針を取りまとめた合意文書を公表した。エネルギーミックスの項目では、国内唯一の原子力発電所の運転を継続するのに加え、政府の財政支援を通じて新たに2か所で原子力発電所を建設する方針を明記している。

オランダでは、1973年から稼働中のボルセラ原子力発電所(PWR、51.2万kW)で総発電量の約3%を供給中。同炉は運転開始後40年目の2013年に運転期間が20年延長され、現在の運転認可は2033年まで有効である。

同国の原子力支持派の非政府組織であるe-Lise財団は今年4月、「パリ協定の下でオランダは2030年までにCO2排出量を1990年比で49%~55%削減する必要がある」と指摘。「同協定の目標達成に向けた国内議論の中で、原子力はこれまで除外されてきたが、CO2を排出しないエネルギーの一つとして、原子力の具体的な将来ビジョンをオランダの法令や国家戦略で示し、新設プロジェクトを実施すべきだ」と勧告していた。

今回の合意文書の中で、連立政権の4党は「地球温暖化への対応でオランダは欧州のフロントランナーとなる覚悟だ」と表明。2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成するため、気候法における2030年時点の目標を厳しくし、CO2の排出量は1990年比で少なくとも55%削減するとした。また、この目標の確実な達成に向けて、同政権は2030年に約60%の削減を目指す方針であり、これにともない2035年までに70%、2040年には80%削減したいと述べた。

エネルギーミックスの項目では、4党は「エネルギーを使い続ける以上、今後は省エネに取り組むとともに温室効果ガスを排出しないエネルギー源に切り替える」と明言。2030年以降にエネルギー供給にともなうCO2排出量が実質ゼロとなるよう、速やかに作業を進めるとしており、具体策として化石燃料による発電量を速やかに削減するものの、供給量は十分確保し価格も抑えたいとしている。

原子力に関しては、「風力や太陽光、地熱などのエネルギー源の補完という位置付けであり、水素製造にも活用するほか、天然ガスの輸入量削減にも役立てたい」と説明。このため、ボルセラ発電所の運転は安全性に留意しつつ長期的に続けていくが、これに加えて「新政権の内閣は新たに原子力発電所を2か所で建設するため、必要な措置を取る」と明記。具体的には、市場の関係者に技術革新や関係調査の実施を促し、入札等も行っていく。財政面についても政府支援を提供するほか、規制面や法制面で必要な整備を行い、放射性廃棄物は安全かつ永久的に保管する考えである。

4党はさらに、合意文書の予算措置案の中で、電力部門における原子力発電所新設用として2023年に5,000万ユーロ(約64億円)、2024年に2億ユーロ(約258億円)、2025年に2億5,000万ユーロ(約322億円)を計上。2030年までの累計予算は、50億ユーロ(約6,440億円)に達する見込みだと表明している。

(参照資料:新政権の連立合意文書(オランダ語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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