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ベルギーの規制当局、条件付きで最も新しい2基の2025年以降の運転継続を支持

19 Jan 2022

ドール原子力発電所 ©ENGIE Electrabel

2025年に脱原子力の達成を予定しているベルギーの連邦原子力規制局(FANC)は1月17日、国内で稼働する全7基のうち、1985年に営業運転を開始した最も新しいドール4号機(PWR、109万kW)とチアンジュ3号機(PWR、108.9万kW)について、「機器類を最新化すれば運転期間の延長が可能」とする分析報告書を連邦政府に提出した。

ただしそのためには、連邦政府が今年の第1四半期中にこれらの運転長期化を明確に決定し、すべての関係者が実施に向けた包括的なアプローチを取る必要がある。同国の送電会社であるエリア・グループは、今年の3月18日に2025年以降のエネルギー供給保証に関する報告書を提出することになっており、「原子力なしでは十分なエネルギー供給を保証できない」とした場合、連邦政府はこれら2基の運転長期化を検討すると考えられる。FANCとしては、すでに連邦経済省のエネルギー担当課と関係協議を開始しており、「運転期間の長期化計画(プランBと呼称)」策定に向けて、すべての関係者が実施すべき活動項目や決定しなければならない事項の全体的なスケジュールを作成したことを明らかにしている。

ベルギーではチェルノブイリ原子力発電所の事故後、緑の党を含む連立政権が2003年に脱原子力法を制定。既存の原子炉7基の運転期間を40年に制限するなどして、2025年までに脱原子力を達成することになっていたが、総発電量の約5割を供給するこれら7基の代替電源が確保できず、2009年当時の政権は最も古い3基の運転期間を10年延長する代わりに、事業者のENGIEエレクトラベル社に拠出金の支払いを求める覚書を締結した。

2011年になると、福島第1原子力発電所事故が発生したことから、最も古い3基のうち出力の小さい2基は2015年に一旦停止されている。しかし、連邦政府とENGIEエレクトラベル社は同年11月、原子力税の支払いも含め両炉の運転期間を2025年まで延長するための条件で合意し協定を締結。最新の安全基準を遵守するための大規模な改修作業を開始した。

その後、同国では2020年10月に7政党による連立政権が誕生しており、2021年12月の協議により7政党は2025年までに7基すべてを閉鎖することで原則合意。その際、最も新しいドール4号機とチアンジュ3号機については、エネルギー供給を保証できない場合に限り2025年以降も運転継続する可能性が残された。

これら2基の運転期間を延長するには、原子力発電所の安全確保に一義的な責任を負うENGIEエレクトラベル社が運転の長期化(LTO)申請書、および安全性を改善する行動計画をFANCに提出しなければならないが、現時点で同社はこれらを提出しておらず、残されている準備期間は少ないとFANCは指摘。同社に対しては手続を早めるよう提案しており、政府が最終決定を下してから6か月以内に同社と協議を行い、何をいつまでに実行しなければならないか確定する方針である。

FANCによると、運転期間の延長に向けて検討を要する重要項目が他にも数多く残っており、一例として安全性改善のための詳細な行動計画の策定に当たり、FANCとしては延長期間が少なくとも10年必要と考えているとした。また、閉鎖する残り5基の廃止措置で放射性廃棄物を管理・貯蔵するのと同時に、これら2基の運転継続に十分な人的資源を確保出来るかも調査する必要がある。

さらには、運転期間の延長では関係者すべての合意が必要になるため、3月18日までに実施しなければならない準備作業は一層膨大だとFANCは指摘。この期日までに関係各位が詳細な行動計画を立てるよう指示する包括的なアプローチについて、FANCは遅くとも今月末までに政府に承認を要請する考えだ。政府がこれら2基の運転期間延長を決めた場合、FANCは関係各位がそれぞれのタスクを全面的に遂行することや、計画全体が適切に実行されることを確実にするため、調整官の任命を政府に要請するとしている。

(参照資料:FANCの発表資料(フランス語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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