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フェンノボイマ社、ハンヒキビ1号機建設計画でロシアとの契約をキャンセル

06 May 2022

ピュハヨキの建設サイト ©Fennovoima

フィンランドのフェンノボイマ社は5月2日、中西部のピュハヨキで進めていたハンヒキビ原子力発電所1号機(120万kW級ロシア型PWR)の建設計画で、ロシアのRAOSプロジェクト社と結んでいたEPC(設計・調達・建設)契約を解除すると発表した。

理由として同社は、ロシアの原子力総合企業ロスアトム社傘下の総合建設請負業者であるRAOSプロジェクト社の作業が非常に遅く、プロジェクトの実施能力が欠如していると指摘。ここ数年は作業の遅れが拡大してきており、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻はプロジェクトのリスクをさらに高めている。RAOSプロジェクト社には、このようなリスクの影響を緩和する能力はないとフェンノボイマ社は強調している。

今回の決定にともない、同社とRAOSプロジェクト社の協力関係は直ちに打ち切られ、ハンヒキビ1号機について進められてきた設計作業や許認可の取得手続き、およびサイトでの作業もすべて終了する。

ハンヒキビ1号機の建設計画については2013年2月、大型炉設計を採用した場合の直接交渉権が東芝に与えられている。しかし、ロスアトム社の国際事業部門であるルスアトム・オーバーシーズ社が、フィンランドに設立する子会社を通じてフェンノボイマ社株の34%引き受けを約束したことから、フェンノボイマ社は2013年12月に最終的にルスアトム・オーバーシーズ社と原子炉供給契約を締結。2015年6月には発電所の建設許可申請書を雇用経済省に提出しており、2016年1月にピュハヨキのサイトで基礎掘削を実施した。

また、建設許可の取得に先立ち2020年6月からは管理棟の建設工事も始まっていたが、今年の3月末、電力を多く消費する企業約60社で構成されるボイマ・オサケイティエ・グループを通じて、フェンノボイマ社に一部出資しているヘルシンキ郡のバンター市はプロジェクトからの撤退を表明。同市は「ロシアの軍事侵攻によりプロジェクトの実施は不透明になった」と指摘しており、「ロシアと長い国境を接するフィンランドの安全保障、フィンランド政府の声明や政府と欧州連合によるロシアへの制裁表明などを照らし合わせると、建設許可を取得するのはもはや不可能だ」と述べた。このほか、フィンランド南西部のトゥルク市も同様に撤退を検討中であると伝えられていた。

今回の決定について、フェンノボイマ社のJ.シュペヒトCEOは、「当社の従業員や建設サイトのピュハヨキ地域、およびサプライチェーン企業への影響が大きいので、その対応でこれらの代表者らと緊密に連携していくほか、建設サイトの温存にも注力していく」と述べた。また、同社取締役会のE.ハルマラ会長は、「EPC契約の解除を決めるのは簡単なことではなかった」と説明。「複雑な要素が多数関係する大型プロジェクトということで徹底的に検討した末の判断であり、マイナスの影響を全面的に受け入れて、その緩和に全力を尽くすのみだ」としている。

一方、EPC契約を打ち切られたロスアトム社は同日、「極めて残念な決定であり、その理由も全く理解しがたい」とコメント。その上で「フェンノボイマ社の執行部が、同社株を34%も保有する当社のプロジェクト関係者と詳細な協議も行わずに打ち切りを決定したという事実を明確にしておきたい」と述べた。また、「建設プロジェクトは順調に進展していたし、当社との提携関係も良好だった」と指摘。ロスアトム社によると、RAOSプロジェクト社は建設許可の取得に必要な文書の準備など、すべての義務事項を細心の注意を払って履行。そのお蔭でフェンノボイマ社は、すでに98%以上の重要文書をフィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)に提出済みであり、5月までの2か月間ですべての文書の提出を終える予定だった。

ロスアトム社としては、国際協力活動のなかで義務事項を無条件に履行するという原則を厳格に全うしつつ、適切な法令や契約に従って自らの権益を守りたいとしている。

(参照資料:フェンノボイマ社ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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