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カナダの2州がSMR建設で協力

21 Apr 2023

「ARC-100」発電所の完成予想図
©ARC Clean Technology

カナダのニューブランズウィック(NB)州とサスカチュワン(SK)州の両政府は417日、両州で第4世代小型モジュール炉(SMR)の建設を念頭に置いた協力の強化で合意し、了解覚書を締結した。

この覚書は、両州およびオンタリオ州がカナダ国内におけるSMRの開発と建設に向けて、201912月に交わした「協力覚書」に基づくもの。同覚書には20214月にアルバータ州も参加し、20223月には4州で「SMR開発・建設の共同戦略計画」を策定している。

今回の覚書により、双方の州営電力であるNBパワー社とサスクパワー社は、SMRの建設計画や関係するサプライチェーンと雇用環境の構築、規制等に関する知見や経験を共有する。具体的には、NB州が州内の複数地点で建設を計画している米ARCクリーン・テクノロジー社製の第4世代SMRARC-100」(電気出力10kW)を、SK州にも建設する方向での協力になる。

SK州はすでに20226月、2030年代半ばまでに州内で建設する最初のSMRとして、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の「BWRX-300」(電気出力30kW)を選定した。同炉については、オンタリオ州営電力のオンタリオ・パワー・ジェネレーション社がそれよりも先に202112月、州内のダーリントン原子力発電所内で、早ければ2028年初頭までに完成させるSMRとして選定。SK州は、オンタリオ州の方針に追随すれば初号機建設にともなうリスクが回避されるなど、カナダ全体で多数のSMRを建設していく上で多くの利点があると説明していた。

一方のNB州では、2018年にNBパワー社が同社のポイントルプロー発電所内で、第4世代のSMR実証炉を2種類建設するというプロジェクトを開始。第4世代のSMR開発は同州の「気候変動アクション計画」に盛り込まれており、同州が2035年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指す上で重要な部分を担う。第4世代のナトリウム冷却高速炉技術に基づく「ARC-100」はこの2種類の1つであり、2029年の運転開始が見込まれている。同州ではまた、北部ベルドゥーンの港湾管理局が202211月、北部地域の経済成長に向けて開発中の「グリーン・エネルギー・ハブ特別区」における活動の一環として、「ARC-100」の導入を目指すと発表していた。

NB州は今回、SMR開発は両州のみならず世界中で、安全かつ信頼性の高い無炭素エネルギーを提供できると指摘。その中でも、第4世代の先進的なSMRは電力のみならず高温熱を生産できるため、様々な産業プロセスの脱炭素化やクリーンな水素の製造には理想的だと述べた。

NB州のM.ホランド天然資源・エネルギー開発相も、「原子力発電所の運転では40年の経験があるので、クリーンエネルギーや再生可能エネルギーの開発でNB州はカナダのみならず世界中で主導的役割を担っていく」と明言。原子力は今後、低炭素な社会に移行する際の重要電源になると指摘している。

SK州のD.モーガン・サスクパワー社担当相は、「SMR関連で両州はここ数年間に強力な協力関係を築いており、今後は国内外のSMR事業で互いに利益を得ていきたい」と表明。SMR技術の活用で脱炭素化が加速されると述べた。

なお、「ARC-100」については、アルバータ州政府も今年3月、州内での建設と商業化に向けてARCクリーン・テクノロジー社と協力する考えを発表している。

(参照資料:NB州政府SK州政府ARCクリーン・テクノロジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA418日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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