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米X-エナジー社 SPACとの合併契約を解除

02 Nov 2023

米国で先進的な小型モジュール炉(SMR)や燃料を開発中のX-エナジー社は1031日、ニューヨーク証券取引所への上場に向けて、202212月に特別買収目的企業(SPAC[1]特別買収目的企業(SPAC)は未公開会社の買収を目的として設立される法人。のアレス・アクイジション社(Ares Acquisition Corporation=AAC) と結んだ合併契約を解除すると発表した。

同契約の締結以降、合併手続きを進めるなかで、X-エナジー社には多くの投資家から強い関心が寄せられていた。しかし、課題の多い金融市場環境や同業者の取引実績、上場企業であることのメリットやデメリットなどを考慮した結果、現時点ではこの手続きを進めないことが最良の道と判断し、両者は合併契約解消に合意した。

X-エナジー社は、熱電併給可能な第4世代の非軽水炉型・小型高温ガス炉(HTGR)となる「Xe-100」(電気出力8kW)を開発中。ベースロード用電源としての役割に加えて、水素製造や海水脱塩など幅広い用途に利用可能なことから、米エネルギー省(DOE)は202010月、「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」の支援対象企業の一つに同社を選定した。

X-エナジー社は20228月に「Xe-100」の基本設計を完了しており、同じ月に大手化学メーカーであるダウ(Dow)社がメキシコ湾岸の自社施設の一つで同炉を4基建設するため、X-エナジー社と基本合意書を締結。その後2026年の実証炉着工に向けて、「共同開発合意書(JDA)」を交わしている。また、今年7月には、北西部ワシントン州の電気事業者であるエナジー・ノースウエスト社が、コロンビア原子力発電所の隣接区域で「Xe-100」を最大12基建設することを計画。2030年までに最初のモジュールを運転開始するため、X-エナジー社とのJDAに調印した。

X-エナジー社のJ.C.セルCEOによると、基本設計が完了した「Xe-100」は現在「最終設計の準備状況審査」の段階にあり、米エネルギー省(DOE)と国防総省(DOD)の両方から、同技術による可搬式マイクロ原子炉の商業化に向けた支援を得ることになった。同CEOは、「当社独自のクリーン・エネルギー技術や競争上の優位性、戦略を実行して、顧客とステークホルダーの利益に貢献したい」と抱負を述べた。

合併契約の実際の打ち切りに当たり、AAC社は定款に明記された期限内での解除は難しいと判断している。同定款の規定に沿ってこの期限を調整するほか、発行済みのX-エナジー社株を117日頃までに一株当たり0.0001ドルですべて買い戻す方針。ニューヨーク証券取引所に対しては、同社株の上場廃止申請書を米証券取引委員会に提出するよう要請する考えだ。

(参照資料:X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA1031日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

脚注

脚注
1 特別買収目的企業(SPAC)は未公開会社の買収を目的として設立される法人。

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