ベトナム政府 原子力発電開発に再度言及
09 May 2025
ベトナム商工省は4月28日、2050年を視野に入れた2021年~2030年の「第8次国家電力開発基本計画」(PDP8)改定版(4月15日に政府承認)について説明する会議を開催。この改定版では、再生可能エネルギー開発の優先とともに、原子力発電プロジェクトの再開について言及されている。2023年5月に承認されたPDP8の改定版にあたる。
会議の席上、商工省のグエン・ホン・ジエン(Nguyen Hong Dien)大臣は、PDP8改定案の策定プロセスで、商工省が「計画法」および「電力法」を含む関連法規を厳格に遵守し、多くの会議やワークショップを開催、著名な科学者や専門家の意見を聴取して適切な修正を加えたと指摘。PDP8改定の承認は重要な出来事であるものの、より重要なのは計画を実現して電力供給の安全を確保し、国の社会経済発展に貢献することであると語った。そして、関連省庁やセクターと緊密に連携して、地域や投資家がプロジェクトの実施を加速するための障害を取り除くための最良、最速、タイムリーな条件を作り出していくと強調した。
改定されたPDP8では、国家エネルギー安全保障の確保、公正なエネルギー移行の実現、再生可能・新エネルギーを基盤とした総合的なエネルギー産業システムの構築を目標としている。具体的には、2026年から2030年までの期間にGDP成長率平均約10.0%/年、2031年から2050年までの期間に約7.5%/年の成長率を想定。成長率の達成を支える電力の安定供給を確保するため、発電設備容量の増強が顕著となっている。2030年までに総発電設備容量は約1.83億~2.36億kWeに増強を予測。これは、改定前のPDP8で計画されていた約1.5億kWeと比較し、約22~57%の増加である。2030年の総発電電力量(輸入を含む)は、約5,604億~6,246億kWhを想定している。
再生可能エネルギーは引き続き最優先事項であり、開発目標が大幅に上方修正されているのが特徴。特に、太陽光発電や陸上および近海の風力発電の伸びが顕著である。太陽光や風力などの再生可能エネルギー源や大規模な需要拠点の近くに分散型蓄電池システムを設置するなど、エネルギー貯蔵の開発も重視している。2030年までに水力発電を除き、発電量に占める再生可能エネルギーの比率を約28~36%に引き上げる目標を設定している。
さらに2050年までに、総発電設備容量は7.75億~8.39億kWeに大幅な増強を想定。総発電電力量は1.36兆〜1.51兆kWhを見込み、再生可能エネルギーがその支柱となる。その比率は74~75%に達するという目標が設定されている。
原子力発電に関しては、2030年~2035年に、総出力400万kWe~640万kWeのニントゥアン第一、第二原子力発電所の運転開始を見込んでいる。なお2050年までに、800万kWeの原子力発電設備の追加の必要があり、需要に応じてさらに増加する可能性があるとするなど、スケールは壮大だ。
ベトナムは2050年までに温室効果ガスのネットゼロ目標を掲げている。石炭火力発電は現状、ベースロード電源であり、発電量シェアは約50%。2030年までは既に計画や建設に投資されているものを含み、現状維持であるが、それ以降は新規プロジェクトは承認されない。石炭火力発電は20年間稼働のプラントを2050年までにバイオマスまたはアンモニアに徐々に転換。ガス火力発電はフレキシブルなエネルギー・ミックスの中心的役割を果たしているが、LNGプラントの水素混焼への移行も視野に入れている。
ベトナム国会は2024年11月、電力需要の拡大を受け、ニントゥアン原子力発電プロジェクトを再開するという政府提案を承認。原子力発電の開発を含む改正電力法も承認された。同プロジェクトではロシアと日本がベトナムに協力して、それぞれ第一および第二原子力発電所(各200万kW)を建設する計画だったが、経済状況を理由に2016年11月に全て白紙となった。