台湾 馬鞍山発電所の運転再開の是非を問う国民投票を可決
23 May 2025
台湾の立法院(国会)で5月20日、台湾南部の屏東県にある馬鞍山原子力発電所(PWR, 1号機:98.3万kW、2号機:97.5万kW)の運転再開を求める、国民投票の実施提案が賛成58、反対49票で可決された。
この提案は、少数野党の台湾民衆党(TPP)が主導したもの。国民投票で問う設問は、「馬鞍山原子力発電所が、安全上の懸念がないことを確認した上で、運転再開することに同意するか」となっている。
台湾で唯一稼働していた同発電所2号機が5月17日に40年間の運転期間を満了し、法律により、永久閉鎖された。国民投票実施の可決は、与党・民進党政権が掲げる目標である「2025年の脱原子力国家(非核家園:原子力発電のないふるさと)の実現」を達成してから、わずか3日後のことであった。
立法院では5月13日、最大野党の国民党(KMT)の主導による、「核子反応器設施管制法(原子炉等規制法に相当)」の第六条条文のうち、原子力発電所の運転期間を40年から最長で20年延長とする改正法案が、第三読会で賛成61、反対50票で可決されている。
TPPが国民投票を提案した背景には、馬鞍山発電所の運転を、安全上の懸念がないことを所轄官庁の同意を経て継続するという重大な政策案は、国民の意思を示す国民投票に付すべきとの判断がある。TPPは運転継続の理由に、馬鞍山2号機の廃止後、政府が設定した2025年の温室効果ガス排出削減目標の達成が困難になると主張。再生可能エネルギーの開発成果が不十分であり、既存の発電によるエネルギー不足、全原子力発電所の閉鎖後は輸入依存度の高い石炭火力やガス火力発電に頼らざるをえず、ネットゼロ目標と相反し、エネルギー安全保障上も好ましいものではないと指摘している。
また、TPPはAI時代を迎え、世界最先端の半導体生産拠点が台湾に集中する現在、産業用電力需要は極めて急を要しているとした上で、台湾の低炭素電源開発は不十分で、2050年ネットゼロ実現は困難を極めるだけでなく、産業経済の発展と国家の競争力にも深刻な影響を与えると懸念を表明。さらに、欧州の多くの国々が、現在の温室効果ガス削減が不十分であり、ロシア・ウクライナ紛争後、エネルギー安全保障の重要性を再認識し、原子力発電の再導入を推進している点にも言及。台湾についても、地理的環境や国際政治情勢のリスクを鑑みれば、産業用電力の安定供給と国民生活の電力確保のためには、原子力を補助的な移行エネルギーとして、一定の運転能力を維持すべきだと主張した。
TPPは、安全性の確保を前提に、できるだけ早い原子力による電力供給を回復し、5月13日に立法院で可決された原子力規制法第六条改正に基づき、台湾のエネルギー供給力を強化すべきだと訴えている。
国民投票法によると、立法院で国民投票の提案が採択された場合、10日以内に中央選挙委員会に送られ、国民投票の実施が議決される。国民投票法により、投票日は8月の第4土曜日に定められており、2021年以降、2年ごとに実施。今年は8月23日に国民投票が実施される予定。なお、国民投票日は休日になる。