フランス 熱供給向けSMR導入を検討
08 Sep 2025
フランスのSMR開発事業者のカロジェナ(Calogena)社は8月26日、仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)と、CEAのカダラッシュ研究所でカロジェナ社製SMR(小型モジュール炉)の設置と熱供給ネットワークへの接続可能性の調査を実施する基本合意書(LOI)を締結した。
カロジェナ社は、ハイテク産業を専門とする仏ゴルジェ(Gorgé)グループの子会社で、熱出力3万kWのSMR「CAL30」を利用した出力ボイラーを開発中。同炉はシンプルな設計、低温と低圧、競争力のあるコストに特徴があり、特に都市の地域熱供給ネットワーク向けカーボンフリーエネルギー源として設計されたもの。フランスでは、暖房エネルギーの95%は化石燃料またはCO2排出由来である。カダラッシュ研究所では2032年までの運転開始を目指している。
カロジェナ社は2023年、仏政府の投資総局(Secrétariat Général Pour l’Investissement, SGPI)を通じて実施された「革新的原子炉」公募プロジェクトに採択され、原子力技術の開発支援を受けている。
CEAは、原子力分野のイノベーションに重要な役割を果たしており、フランス産業界や主要研究プログラムを支援。近年では、「フランス2030」計画における採択プロジェクトの開発・産業化支援にも取組んでいる。カダラッシュ研究所は、原子力(核分裂・核融合)、太陽エネルギー、バイオエネルギー、水素のようなカーボンフリーエネルギーの研究・技術開発の拠点。また、仏海軍向けの原子力推進システム関連事業、原子力施設の廃止措置や除染、原子力安全に関する研究にも従事している。
現在、CO2を排出する化石燃料(ガスや石炭)に大きく依存している暖房市場に対応するため、暖房分野での原子力利用が国際的に検討され始めている。フィンランドのクオピオ市の地域熱供給事業者であるクオピオン・エネルギア(Kuopion Energia)社は熱出力が9万~12万kWの原子力による熱供給の可能性を検討しており、カロジェナ社は、クオピオン社の環境影響評価(EIA)プロセスに招請された。クオピオン社は、2030年代半ばまでにバイオマス発電所を閉鎖する計画。原子力地域熱供給の候補地として、市の北部のソルササロ(Sorsasalo)と南部のヘポマキ(Hepomäki)に位置する2地点を選定している。なおクオピオン社は、フィンランドのSMR開発企業であるステディ・エナジー(Steady Energy)社とも2024年7月、SMRによる地域暖房用の熱供給の開始に向けて、事前準備の実施で合意している。