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米陸軍 マイクロ炉で陸軍基地の電力レジリエンス強化へ

04 Dec 2025

佐藤敦子

夜間の米陸軍基地
©U.S.ARMY

米陸軍は1118日、陸軍が10月に開始したマイクロ炉導入プロジェクト「ヤヌス計画(Janus Project)」の最初のステップとして、マイクロ炉発電所の設置候補地を発表した。拠点の特性や電力需要、既存インフラの状況を踏まえ、全米9つの陸軍施設を特定した。米陸軍は、配備先は1拠点に限らず、条件を満たす複数拠点への導入拡大も視野に入れている。

選定されたのは以下の9施設。
・フォート・ベニング(ジョージア州)
・フォート・ブラッグ(ノースカロライナ州)
・フォート・キャンベル(ケンタッキー州)
・フォート・ドラム(ニューヨーク州)
・フォート・フッド(テキサス州)
・フォート・ウェインライト(アラスカ州)
・ホルストン陸軍弾薬工場(テネシー州)
・ルイス・マッコード統合基地(ワシントン州)
・レッドストーン・アーセナル(アラバマ州)
陸軍は今後、各施設の環境・技術的要件の追加評価を進め、最終決定に向けた検討を行う。

ヤヌス計画は、20255月にトランプ大統領が署名した大統領令「国家安全保障のための先進原子炉技術の配備」に基づき、1014日に公表された。近年、軍事作戦領域ではAI(人工知能)の導入や次世代兵器システムの稼働により電力需要が急増しており、基地の電力レジリエンス強化が課題となっている。計画では、米エネルギー省(DOE)と協力し、民間の送電網から独立したマイクロ炉を陸軍基地に設置することで、任務遂行に不可欠な電力の確保を図る。初号機の設置は2028年までを目標にしている。

さらに米陸軍は、国防イノベーション・ユニット(DIU)と協力し、民間企業から幅広く技術提案を募る枠組みを整備した。DIUは、必要な技術分野を示す関心領域通知を公開し、産業界にマイクロ炉の導入に向けた提案を募集している。両者は、NASAが民間宇宙輸送で採用した方式を参考に、開発の進捗に応じて企業を段階的に支援する契約モデルを構築している。陸軍は燃料サイクルや関連サプライチェーンの監督を担いながら、民間技術を取り込む形で初期配備に向けた検討を進める方針だ。

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