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ドイツ 旧原子力発電所サイトに核融合発電所の建設を模索

24 Mar 2026

桜井久子

プロキシマ・フュージョン初の商業用ステラレーター核融合発電所の完成予想図
© Proxima Fusion GmbH

ドイツの核融合スタートアップ「プロキシマ・フュージョン」社は226日、ドイツの電力会社RWE社、ドイツ南部バイエルン州、ドイツのマックス・プランク・プラズマ物理研究所(IPP)と、世界初となる「ステラレータ方式」の商用核融合発電所「Stellaris」を建設する覚書を締結した。建設サイトは、RWE社がバイエルン州で廃止措置中のグンドレミンゲン原子力発電所サイトを想定している。

プロキシマ社は2023年4月にIPPからスピンアウト。ドイツ北東部グライフスバルトにあるIPPのステラレータ方式の実験装置ヴェンデルシュタイン(Wendelstein)7-Xで得られた知見を活用し、実用化に向けた準備を進めていく方針だ。ステラレータ方式は、複雑にねじれたコイルで強力な磁場を発生させ、ドーナツ状のプラズマを安定して閉じ込める技術で、設計は難しいものの、トカマク方式と比較すると連続運転で安定して動作するように設計できるという。

本覚書では欧州における商用核融合実現に向けた具体的な道筋を示しており、最初のステップとして、バイエルン州ガーヒングにあるIPPの近くに、実証用のステラレータ型核融合装置アルファ(Alpha)を建設する。アルファを2031年に稼働させ、核融合技術の実証・検証、実環境での試験を通じて、開発サイクルを短縮させ、次段階である商用発電所ステラリス(Stellaris)の建設を加速させたいとしている。

両プロジェクトにより、欧州のメーカーや技術者向けに数千もの雇用とサプライヤー契約を生み出すことになる。最終的には、核融合を欧州のエネルギーシステムの一部とし、輸入化石燃料エネルギーへの依存低減を目標としている。

この覚書の下で、プロキシマ社が設計・調達・建設(EPC)を担当し、マックス・プランク研究所がプラズマ物理など理論面を主導、RWE社が発電所建設・運用のノウハウを提供する。建設コストはアルファ・プロジェクト単独で20億ユーロと試算されており、プロキシマ社が資金承認を条件に、アルファの建設コストの20%を民間投資家から調達予定だ。RWE社は出資の意向を示しており、バイエルン州政府は予算上の制約を条件に、最大4億ユーロの出資を約束している。また、ドイツのハイテク・アジェンダ[1] … Continue readingの下、連邦政府による支援を獲得したい考えだ。連邦政府は、202510月に承認した「核融合アクションプラン」において、商用核融合の加速にむけて2029年までに20億ユーロの公共投資を計画している。

プロキシマ社のF. シオルティーノCEOは、今回の覚書締結を研究レベルから産業レベルへの転換点と指摘。バイエルン州のM. ゼーダー首相は、核融合は無限に近いクリーン電源であり、電気自動車やAIによる電力需要増に対応可能である、と期待を寄せている。

なお前日の225日、プロキシマ社は、30社以上の欧州および国際的な企業を結集する産業コンソーシアム「アルファ・アライアンス」の立上げを発表。同アライアンスは、製造、システム統合、サプライチェーンの調整を通じて、アルファの実現だけでなく、将来の商業用ステラレータに必要なサプライチェーンと産業能力の構築を目的とする。加盟企業は、核融合システムの産業化と大規模展開に必要な、材料、部品、組立、インフラにわたる能力を提供。日本からは、京都フュージョニアリングとフジクラが参加している。

脚注

脚注
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2025年7月、ドイツ政府は技術革新と経済競争力の強化などを目的とした国家戦略「ハイテク・アジェンダ・ドイツ」を閣議決定。研究・テクノロジー・イノベーション政策を再構築し、より一層の付加価値の創出、競争力、主権の確立を目指し、総額55億ユーロの投資を予定。

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