イタリア議会下院 原子力発電再開に向けた法案を可決
16 Jun 2026
イタリア議会下院は6月4日、持続可能な原子力発電再開に向けた法令整備に関する権限を政府に委任する法案を賛成155票、反対86票、棄権8票で可決した。法案成立後12か月以内に、政府に一連の施行令を発令する権限を付与するもの。これにより法的枠組みが確立され、政府は原子力発電の段階的廃止を開始してから約40年ぶりに原子力発電再開に向けた計画策定ができるようになる。法案はすでに上院での審議に送られ、政府は早ければ夏季休会前の7月末までに法案の成立、年内の施行令の公布を見込んでいる。
施行令では、持続可能な原子力発電のライフサイクル全体を網羅する包括的な制度が整備される。モジュール炉の新設計画、サイト選定、建設、運転に加え、循環型経済(circular economy)の考え方をベースに燃料製造や再処理などを盛り込んだ国家プログラムの策定のほか、既存設備の廃止措置や放射性廃棄物および使用済み燃料管理、核融合に関する研究開発やその利用も制度設計の対象。独立した原子力安全規制機関の設置など、行政体制の再編も想定している。
2025年10月、イタリア閣僚評議会は、持続可能な次世代原子力技術の導入支援に向けて政府に立法措置を策定するための権限を委任する法案を最終審査で承認した。この法案は、G. メローニ首相およびG. ピケット=フラティン環境・エネルギー安全保障相の提出によるもの。持続可能な原子力発電および核融合を組み込んだ、「イタリアのエネルギーミックス」を実現することを目的としている。2050年を視野に入れた欧州の脱炭素化政策の枠組みの中で、小型モジュール炉(SMR)や先進モジュール炉(AMR)、核融合のような先進技術を再生可能エネルギー源の補完とする戦略的手段として位置付け、エネルギー供給の継続性の保証とエネルギー自立の促進、脱炭素化目標の達成、エネルギーコストの削減と国内産業の競争力の確保を目指している。
イタリアでは1960年初頭から4サイトで合計4基の原子力発電所が稼働していたが、チョルノービリ原子力発電所事故後の1987年、国民投票によって既存の全発電所の閉鎖と新規建設の凍結を決定。最後に稼働していたカオルソ(BWR、88.2万kWe)とトリノ・ベルチェレッセ(PWR、27万kWe)の両発電所が1990年に閉鎖し、脱原子力を完了した。2009年になると、EU内で3番目に高い電気料金や世界最大規模の化石燃料輸入率に対処するため、原子力復活法案が議会で可決された。しかし、2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて、同じ年の世論調査では国民の9割以上が脱原子力を支持。当時のS. ベルルスコーニ首相は、政権期間内に原子力復活への道を拓くという公約の実行を断念した。





