原子力産業新聞

海外NEWS

IAEA 海上におけるSMR利用促進に向けてATLASを発足

31 Aug 2026

桜井久子

© IAEA

国際原子力機関(IAEA)は826日、民間船舶や浮体式原子力発電所への小型モジュール炉(SMR)などの原子力技術利用を安全・セキュリティ・平和利用の観点から国際的に支援する新たな枠組み「海洋分野における原子力技術の応用(Atomic Technologies Licensed for Applications at Sea, ATLAS)」イニシアチブを立上げたATLASは、特定の原子炉を開発・導入するプロジェクトではなく、原子力推進船舶や浮体式原子力発電所を商用化するための国際的な安全・規制・制度面の土台づくりを目的とした、原子力分野と海運分野を国際的に結びつける初の協調的な取組みである。

米政府がワシントンD.C.で主催した閣僚級会合(826日~27日)でATLASイニシアチブが発表された。同会合には50か国以上から政府、規制当局、原子力・海運業界、港湾関係者など約600名が参加。28か国[1] … Continue readingが共同声明に参加した。

原子力の海洋用途を現実化するには、国際的な原子力・海事コミュニティが協力し、原子力技術の安全かつ確実な導入を確保、海上における民生用原子力利用に対する保障措置の効果的かつ効率的な実施の強化が不可欠。そのためIAEAは今後、運営委員会のほか、各国や産業界などからなる6つの専門プロジェクトグループを設置し、原子力安全、核セキュリティ、保障措置、規制などを検討する。特に、原子炉を船舶や海上施設に搭載する場合に必要となる国際的なルールや規制、港湾インフラ、責任分担など、陸上の原子力発電所とは異なる実務上の課題への対応を進めていくとしている。IAEAは、1962年に運転を開始した世界初の民間原子力貨物船「NSサバンナ」から60年以上を経て、次世代の民間海洋原子力利用に向けた国際的なルール作りを本格化させる方針。

ATLAS発足の背景には、世界の貿易の約80%を海上輸送が担い、海上貿易が年間約2%拡大する一方で、長距離輸送のエネルギー安全保障や脱炭素化が課題となっていることがある。特にSMRなどの先進炉は海洋用途において安全かつ実現可能な選択肢となり得る。頻繁な燃料補給を必要としない高速海上輸送を可能とし、コンテナ船、バルク船、タンカー、クルーズ船、砕氷船、オフショア支援船などへの利用が期待されている。また、浮体式原子力発電所は、送電網などのインフラが整っていない沿岸・遠隔地の産業に、電力、熱、淡水、非常用電源などを供給する用途も見込まれる。IAEAは設計、燃料、海洋工学の進展により、一部の原子力推進船舶は2030年代にも導入可能になると予測している。

IAEAのリーダーシップの下、ATLAS参加国や産業界の間で海事分野における革新的な民生用原子力技術の開発と導入が促進され、あらゆる活動が最高水準の原子力安全、核セキュリティ、および不拡散に根差した協力の継続が期待されている。

 

脚注

脚注
1 アルゼンチン、バングラデシュ、ベルギー、ブラジル、カナダ、デンマーク、ドミニカ、エクアドル、フィンランド、フランス、ギリシャ、インド、イタリア、日本、韓国、マルタ、オランダ、ノルウェー、パラグアイ、ポーランド、ルーマニア、サウジアラビア、シンガポール、スロベニア、トルコ、UAE、英国、米国

cooperation