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英NDA、放射性廃棄物の分類・分離で革新的技術の研究開発コンペ開始

29 Jul 2020

©NDA

英国の原子力廃止措置機構(NDA)は7月27日、閉鎖された原子力発電所や原子力サイトの廃止措置活動から出る放射性廃棄物の分類と分離で、革新的技術の研究開発コンペを合計390万ポンド(約5億2,932万円)の予算で開始すると発表した。

このコンペはNDAの資金提供により、中小企業の技術革新促進に向けた省庁横断的な政策枠組み「中小企業研究イニシアティブ(SBRI)」の枠内で行われる。ロボットやセンサー、人工知能(AI)といった自動制御型の総合ツールキットを開発するのが目的で、これらの技術を通じて処分する廃棄物の分類と分離を適切に行うことで廃棄物のレベルを下げ、廃止措置活動の生産性と安全性を改善、コストの削減を図る考えである。

コンペの実施に際しNDAは、英国最大の原子力複合施設セラフィールド・サイトの管理運営と廃止措置業務に当たっているセラフィールド社、および閉鎖済みの旧型ガス冷却(マグノックス)炉すべてを管理しているマグノックス社とともに、英国政府のイノベーション産業助成機関「イノベートUK」と連携。放射性廃棄物の分類・分離で、全く新しい革新的なアプローチを提案するよう英国全土の企業に呼びかけている。

提案の受付は8月17日に開始し、11月11日に締め切る予定。60万ポンド(約8,143万円)の予算を割り当てた第1段階としてNDAは来年2月までに最大で10プロジェクトを選定し、3月以降3か月分の研究開発契約費として、それぞれに対し実行可能性調査の実施費用など最大6万ポンド(約814万円)を提供する。同段階が終了する頃、NDAは申請者が取りまとめた技術面の実行可能性報告書を精査し、第2段階への申請が可能な有望プロジェクトを最大4件選定。各申請者と15か月間で90万ポンド(約1億2,215万円)という研究開発契約を結び、非放射性の環境下でフル・スケールのプロトタイプ機器の実証を行うことになる。

NDAの担当者は今回のコンペに関連して、「原子力サイトの廃止措置というNDAミッションが進展するなかで、放射性廃棄物の取り扱いは非常に大きな課題になっている」と説明。原子力経験の有無とは関係なく、国内すべての部門から革新的な技術が提案されることを期待すると述べた。イノベートUKの担当者も「SBRIの別事業でNDAと再び協力する機会が得られ、原子力廃止措置のサプライチェーンに技術革新をもたらす手助けができることを歓迎する」と表明。このコンペは英国企業が事業を拡大する好機となるだけでなく、国内の放射性廃棄物をより安全・迅速かつ安価な方法で取り扱うことが可能になると指摘した。

(参照資料:NDAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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