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加オンタリオ州、ダーリントン発電所サイトでSMR建設に向けた活動開始

16 Nov 2020

ダーリントン原子力発電所
©Ontario Power Generation

カナダのオンタリオ州営電力会社(OPG)社は11月13日、既存のダーリントン原子力発電所(93.4万kWのカナダ型加圧重水炉×4基)で、小型モジュール炉(SMR)の建設に向けた活動を開始すると発表した。

OPG社はこれに先立つ10月6日、具体的な協力を行うSMRデベロッパーの候補として、カナダのテレストリアル・エナジー社と米国のGE日立・ニュクリアエナジー社、およびX-エナジー社を選定。SMRはオンタリオ州経済を再活性化させる上で非常に重要だと指摘したほか、同州とカナダ連邦政府が推進する温室効果ガス排出量の削減目標達成にも役立つとしている。

OPG社は2006年、同発電所で新しく大型炉を増設するため「サイト準備許可(LTPS)」を申請している。カナダ原子力安全委員会(CNSC)は2012年8月にLTPS発給の判断を下したが、オンタリオ州政府は翌2013年に同増設計画の保留を発表。同発電所で稼働中の4基、および同州内にある2つのその他原子力発電所についてもその後、運転期間の延長計画や大規模な改修プロジェクトが進められている。

OPG社は今回、原子炉の建設・運転に先立つ許認可手続きの一環として、当時のLTPS復活をCNSCに申請した。早ければ2028年にも同サイトでSMRを完成させ、州民すべてにSMRの恩恵をもたらすとしたほか、同州および同発電所が立地する州南部ダラム地方を、世界でも著名なクリーン・エネルギー地区として確立。「供給エネルギーのクリーン化」を推進するオンタリオ州では、すでに2014年に州内の石炭火力発電所の全廃に成功している。

OPG社の発表によると、カナダ産業審議会が実施した調査の結果、同州内で単機の原子炉を新設し60年間稼働させることで、同州には莫大な経済効果が得られることが判明。プロジェクトの開発期間中、間接雇用も含めた新規の雇用者数は年平均で700人以上にのぼる。その後の機器製造・建設期間には1,600人分、原子炉の運転が始まれば約200人分、廃止措置期間中でも160人分の雇用が確保できるとした。また、国内総生産(GDP)に対する直接的・間接的な効果は総額にして25億カナダドル(約1,994億円)に達するほか、オンタリオ州の財政収入も8億7,000万加ドル(約694億円)以上増加すると予測している。

今回のOPG社の判断について、オンタリオ州エネルギー省のG.リックフォード大臣は「ダーリントン発電所が立地するダラム地方で、この10年以内に最新鋭のSMR建設に向けてOPG社を後押しできることを州政府は誇りに思っている」と述べた。同州および原子力関係で同州と連携するサスカチュワン州、ニューブランズウィック州、アルバータ州は、カナダにおけるSMR開発で主導的役割を担うとともに、カナダが保有する原子力技術や専門的知見を世界中に知らしめていると強調した。

(参照資料:OPG社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)

 

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