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米ケイロス社、テネシー州でフッ化物塩冷却高温炉の試験炉建設へ

16 Dec 2020

ETTP©DOE

米国の原子力技術・エンジニアリング企業であるケイロス・パワー社は12月11日、開発中の「フッ化物塩冷却高温炉(FHR)」(電気出力14万kW)の試験炉を、テネシー州にあるエネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」内で建設する方針を明らかにした。

ケイロス社のFHR (KP-FHR)は、コンバインドサイクル発電とコスト面で競合可能な無炭素電源となるよう、同社が商業化を目指している先進的原子炉。同社は2018年11月から原子力規制委員会(NRC)と許認可申請前の相互交流活動を展開しており、2030年までに実証炉を米国内で建設する計画である。同社が目標としているのは、先進的技術によってクリーンエネルギー社会への移行を促し、環境を保全しつつ人々の生活の質を劇的に向上させること。KP-FHRの強固な安全性と適正な価格を通じて、この目標を達成できるとしている。

ケイロス社はKP-FHRの冷却に低圧の液体フッ化物塩を用いており、燃料には3重被覆層・燃料粒子「TRISO」を使用する。固有の安全性を保持したまま、大容量の電力と高温のプロセス熱を生成できると言われており、2002年にDOE傘下のオークリッジ国立研究所(ORNL)がFHRの概念を提案した後、これを元にMITやUCバークレーなどが個別の要素技術の研究を進めていた。

また、建設サイトとなるETTPでは、DOEが40年にわたって軍事用と民生用のウラン濃縮複合施設を操業していた。1987年に永久閉鎖した後は、DOEの環境管理局(EM)が同サイトを民間企業保有の多目的産業パークとするため浄化作業を継続中。EMは今年に入り、同サイトで主要部分の浄化作業が完了したことを明らかにした。一方、ケイロス社は同サイトの「K-33ガス拡散法ウラン濃縮プラント」が立地していた跡地を取得するため、管理会社と了解覚書を締結、現在はこの土地の評価作業が行われている。

ケイロス社の創業者の1人であるM.ローファーCEOは、「ETTPで様々なインフラ設備を利用できるほか、主要な協力者が近隣のORNLに存在するため、当社の技術を実証するには最適のロケーションだ」と指摘した。オークリッジ市のW.グーチ市長も、「当市は原子力技術革新では由緒ある歴史を持つ土地柄。今後も近代的原子力技術への転換を推し進めるにあたり、ケイロス社は当市が技術革新の中心地であることを実証する重要な部分を担うだろう」と述べた。

(参照資料:ケイロス・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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