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スウェーデンのリングハルス1号機が永久閉鎖

06 Jan 2021

リングハルス原子力発電所©Vattenfall

スウェーデンのバッテンフォール社は1月5日、南西部のヨーテボリ近郊に立地するリングハルス原子力発電所で45年近く稼働した1号機(90万kW級BWR)を、予定通り昨年12月31日付けで永久閉鎖したと発表した。

同炉の閉鎖は2015年の株主総会で決定していたもので、同決定に従って2号機(90万kW級PWR)がすでに2019年末で閉鎖済み。同炉では今後廃止措置を行うことになっており、バッテンフォール社は近々、燃料の抜き取りと廃止措置の準備を開始する。本格的な解体作業は2022年後半に始まる予定で、2030年代まで続く見通しである。

これら2基を当初予定の2025年より5年近く前倒しで閉鎖したことについて、バッテンフォール社のA.ボルグCEOは「経済性の観点から決めた正しい判断であり、将来使用する発電システムで旧式の技術を使うべきではない」とコメントした。その一方で同社は昨年11月、近隣のエストニアで新興エネルギー企業が進めている小型モジュール炉(SMR)導入計画に対し、協力を強化していくと決定。世界ではSMRへの期待がますます高まりつつあるとの認識の下、ボルグCEOは「SMRなどの新しい原子炉が建設されていくのを無視することはできないが、いかなるタイプの発電技術であれ、市場の関心を引くようなコスト面の競争力を持たなくてはならない」と強調した。

リングハルス1号機は、2号機より約8か月遅れの1976年1月に営業運転を開始した。当初の出力は73万kWだったが、数年にわたる改善工事の結果、出力は最終的に90万kW台まで増強された。バッテンフォール社は2015年当時、2号機とともに同炉で2017年以降に改善・最新化作業を開始し2025年まで運転を継続する方針だったが、電力価格が低迷していたのに加えて、2014年に発足した政権の脱原子力政策により議会が原子力税の引き上げを決定。原子力発電所の採算性が悪化したことから、同社はスウェーデン国内で最も古いリングハルス1、2号機への投資プロジェクトを停止、早期閉鎖することに決めた。

発表によると、1号機は2019年に過去最高の67億3,642万kWhを発電。運転開始以降の累計では、閉鎖されるまでに2,200億kWhの無炭素電力を供給し続けた。同量の電力を石炭火力や石油火力で発電した場合と比べると、CO2にして約2億トンの排出を抑えた計算になるとしている。

なお、同社は1980年代に運転開始した同3、4号機(各110万kW級PWR)については、予定通り少なくとも60年間稼働させると述べた。これら2基では、約9億クローナ(約113億円)の投資を通じて独立の炉心冷却系が装備されており、天候に左右される再生可能エネルギー源の発電量を補いつつ、2基だけで国内の総発電量の約12%を賄っていると指摘した。

(参照資料:バッテンフォール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2020年12月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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