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ロシアのロスアトム社、2021年は海外市場に注力

09 Feb 2021

ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は2月5日、国内原子力産業界の従業員向けにA.リハチョフ総裁のビデオメッセージを発信した。2021年は原子力を中心とする従来の事業を一層強化していくため2050年までの開発計画を策定するほか、新規事業の比重を高めるなど戦略的な方向に乗り出していく考えを明らかにしている。

リハチョフ総裁は同社の2020年の実績を振り返り、「風力発電や核医学、デジタル製品、複合材料といった事業が十分成長しており、ロスアトム社の収益拡大に大いに貢献する見通しとなった」と述べた。その上で、今後は世界のリーダー的立場を獲得することを念頭に、新規事業の基礎固めを進めていると説明。具体的には、ロジスティクス事業の国内大手Deloグループと協力して同事業のへの参入を試みているほか、宇宙・人工衛星システムの開発で民間企業と協力、水素生産についても第一歩を踏み出そうとしている。

同社はまた、国連サミットで採択された「持続可能な発展に向けたアジェンダ」に関わる海外市場に力を入れる方針で、昨年末には「国連グローバル・コンパクト・ネットワーク」にも参加した。同ネットワークは、各企業が責任ある創造的リーダーシップを発揮して、社会の良き一員として持続可能な成長を実現させるという世界的な取り組み。世界をより良い方向に変えるための、信頼できるパートナーとしてロスアトム社が認識されるよう、海外市場向けの政策を打ち立てる必要があるとしている。

ミシュスチン首相(=左)とロスアトム社のリハチョフ総裁©Rosatom

リハチョフ総裁はさらに、前日の4日にM.ミシュスチン首相と会見し、ロスアトム社の2020年の実績を報告するとともに2021年の戦略計画を説明したと表明。ユーラシア経済連合に所属するアルメニアやウズベキスタン、カザフスタン、キルギスタン、ベラルーシなどとの協力についても、協議を行った。

この会見の中で同総裁は、ロスアトム社の諸外国からのこれまでの受注総額が2,500億ドルを超えている事実に言及。今後の見通しについても、10年間の総額で約1,400億ドルのレベルに留まると見込まれる。一方、同社は昨年、自己資本の中から2,500億ルーブル(約3,500億円)を投資したほか、国家予算の中からは1,300億ルーブル(約1,840億円)を投資。「予算の執行はほぼ100%キャッシュで行っており、国の予算は責任ある方法で注意深く使っている」と強調した。

一方のミシュスチン首相は、ロスアトム社がベラルーシを含む12か国でロシア型PWR(VVER)の建設を積極的に進めている点を高く評価。「原子力の範疇を超えて、デジタル技術やレーザー技術、量子計算などの技術にも幅広く関わっている」と指摘した。また、2020年は新型コロナウイルスによる感染が拡大するなど困難な年だったが、V.プーチン大統領が4月に「ロシア連邦における2024年までの原子力利用分野の科学・技術研究と機器開発に関する大統領令」を公布。同令に沿って、原子力産業界では各種のプログラムが進展中だと首相は述べた。

(参照資料:ロスアトム社の発表資料(ロシア語)、ロシア政府の発表資料(ロシア語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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