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OL3建設プロジェクトの完了条件でTVOと企業連合が合意

19 May 2021

©TVO

フィンランドでオルキルオト原子力発電所3号機(通称OL3=PWR、172万kW)を建設中のティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は5月17日、工事を請け負った仏アレバ社および独シーメンス社の企業連合と、建設プロジェクトを完了する際の条件事項について両者が合意したと発表した。

OL3では今年3月に燃料の初装荷が行われており、同炉を初めて送電網につなぐスケジュールは今のところ今年の10月、定常的な発電(営業運転)を開始するのは2022年2月となっている。仮に、同企業連合が2022 年2月末までにOL3を完成できなければ、追加の補償金をTVOに支払うことで今回双方が合意。この合意文書への最終的な調印は、今月末に行われる予定である。

OL3の建設工事は2005年8月、世界で初めてアレバ社(現・フラマトム社)製の欧州加圧水型炉(EPR)設計を採用して始まったが、初号機であるが故に規制関係文書の確認作業や土木工事等に想定外の時間を費やした。完成は当初2009年に予定されていたが、このスケジュールはこれまでに幾度となく延期されており、TVOと同企業連合は2018年3月、工事の遅れにともなう損害の賠償について包括的な和解契約を締結。企業連合側が分割払いで総額4億5,000万ユーロ(約599億円)をTVOに支払うほか、OL3の完成に必要な人的、技術的資源も提供することになった。 

TVOの発表によると、同社は企業連合に所属するアレバNP社とアレバGmbH社、および独シーメンス社のほかに、アレバ・グループの親会社であるアレバSA社を加えたサプライヤーと、昨年の夏から建設プロジェクトの完了条件に関する交渉を続けていた。この建設プロジェクトは、約32億ユーロ(約4,265億円)という固定価格のターンキー契約で開始されたが、アレバ社側は今回OL3の完成に必要な資金を確保するため、財政上の解決策も準備していた。

この交渉で、両者が合意に達した主な原則と条件事項は以下のとおり。

  • 2018年に和解契約を締結した際、アレバ社が設置した専用の「信託」に企業連合側から新たに約6億ユーロ(約799億円)を補充し、OL3の完成費用に宛てる。(補充はすでに今年1月から開始。)
  • 2021年7月以降2022年2月末までの期間は、双方がそれぞれの経費を自ら負担する。
  • 2022年2月末までにOL3を完成できなかった場合、企業連合側は実際の完成日に応じて遅れにともなう追加の補償金をTVOに支払う。

TVOのJ.タンフアCEOは「今回の合意によって、2022年の営業運転開始に先立ち前提条件が設定された。今年10月の送電網接続を目指して、当社は意を決してプロジェクトを進めていく」と表明。OL3が稼働を開始すれば、国内で必要とする電力の約15%を賄えるほか、地球温暖化の防止でフィンランドが講じる措置としては最大のものになると指摘した。 

(参照資料:TVOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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