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中国、建設中の小型HTRに燃料を初装荷

24 Aug 2021

HTR-PMにおける燃料の装荷作業 ©華能集団公司

中国核工業集団公司(CNNC)は8月23日、山東省栄成の石島湾で建設中の「ペブルベッド型モジュール式(PM)高温ガス炉の実証炉(HTR-PM)」(電気出力21.1万kW)で、21日から燃料の装荷を開始したと発表した。

CNNCの傘下企業が参加する同機の建設プロジェクトでは、今年3月までに冷態機能試験と温態機能試験が完了。今月20日には国家核安全局(NNSA)が運転許可を発給した。燃料の初装荷はこれを受けたもので、同機は年内にも国内送電網に接続される予定である。

高温ガス炉は第4世代の先進的原子炉設計の一つであり、HTR-PMは1つの発電機を熱出力25万kWの双子のモジュールユニットで共有する設計。CNNCによると、HTR-PMは熱電併給も可能な上に、事故が発生しにくい固有の安全性を保有。幅広い目的に利用が可能という長所を持ち、独立した規模の小さい送電網にも対応できる。

HTR-PMの建設は科学技術関係の国家プロジェクトという位置づけになっており、「華能山東石島湾核電有限公司(SHSNPC)」が中心となって2012年12月から建設中。SHSNPCには、中国の5大発電企業の一つである華能集団公司が47.5%出資しているほか、CNNCが2018年に経営を再統合した中国核工業建設公司(CNEC)が32.5%を出資。北京の核能技術研究院で熱出力1万kWの実験炉「HTR-10」を運転する清華大学も、20%を出資している。また、プロジェクトのEPC(設計・調達・建設)契約は、CNECと清華大学の合弁事業体である中核能源科技有限公司(チナジー社)が請け負っている。

HTR-PMの建設と運転を通じてCNNCは、中国が主要戦略の一つとして推進する「CO2排出量をこれ以上増やさず頭打ちにし(CO2排出ピークアウト)、実質ゼロ化(カーボンニュートラル)する」という目標の達成に向け、技術革新で貢献することを目指している。また、燃料装荷後の同機では基盤を築き商業化を加速。中国の原子力産業界を高度に発展させることにより、HTR技術を世界中に普及させていく考えである。

ペブルベッド型HTRで使用する燃料は、黒鉛粉末と混合した燃料粒子を直径6cm程度の球状に圧縮成型し、炭化ケイ素(セラミック)をコーティングしたもの。このような燃料球には高温や腐食、摩耗に強いという特性があり、HTR-PM用の燃料球はCNNC傘下の中核北方核燃料元件有限公司が製造した。同機では原子炉一基あたり、約42万個の燃料球を装荷するとしている。

(参照資料:中国華能集団公司②(中国語)中国核工業集団公司(中国語の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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