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米ナインマイルポイント原子力発電所で水素製造の実証プロジェクト

27 Aug 2021

ナインマイルポイント原子力発電所
©Exelon generation

米国最大手の原子力発電事業者であるエクセロン・ジェネレーション社は8月18日、ニューヨーク州北部のオスウェゴ郡で運転するナインマイルポイント原子力発電所(60万kW級と130万kW級のBWR各1基)で、水素の現地製造の可能性を実証するプロジェクトを実施すると発表した。

米エネルギー省(DOE)から提供される補助金により、水素の現地製造がもたらす将来的なメリットを評価するのが主な目的である。これにともない、同社は水素の製造に必要な装置(電解槽)の入手でノルウェー国籍のNel Hydrogen社と連携するほか、DOE傘下のアルゴンヌ国立研究所とアイダホ国立研究所、および国立再生可能エネルギー研究所と協力。水素を同発電所内で一貫的に製造、貯蔵、活用できることを実証する。

エクセロン社の発表によると、同プロジェクトでは具体的に、原子力発電から派生する副産物の水素を経済的に供給していくことができる見通し。(安全に回収・貯留した上で、100%無炭素な電源として市場に提供する可能性を探り、将来は輸送その他の目的に産業利用することになる。

同社のD.ローデス原子力部門責任者(CNO)は、「プロジェクを実施する沢山の候補サイトの中から当社はニューヨーク州を選んだが、これは同州の公益事業委員会(PSC)が2016年、州北部の原子力発電所に補助金を提供する支援プログラムも含め、意欲的な温暖化防止政策『クリーン・エネルギー基準(CES)』を採択したことによる」と指摘。同州の州政府とは強い結びつきがあるとの認識を表明した。

DOEの補助金は、DOEのエネルギー効率・再生可能エネルギー局(EERE)、水素・燃料電池技術室が推進する「H2@Scaleプログラム」からエクセロン社に提供される。この構想でDOEは、水素を適正な価格で製造・輸送・貯留・活用できることを実証し、様々な産業部門を脱炭素化する方策を模索。CO2の排出量も削減して大気汚染の影響を緩和するほか、経済的に不利な条件下にあるコミュニティには利益をもたらしたいとしている。

今回のプロジェクトではまた、Nel Hydrogen社が2022年に約260万ドルの「プロトン交換膜式(PEM)電解槽(0.125万kW)」をナインマイルポイント発電所に納入する。同社はノルウェーの水素技術企業であるNel ASA社の米国子会社で、その8月11付けの発表によると、エクセロン社は同原子力発電所で水素を自給した上で、タービン冷却や化学制御関係の要件を満たす計画。また、Nel Hydrogen社の電解槽を適切に運転して、原子力発電所における水素製造の経済的実行可能性を実証するほか、DOEの「H2@Scaleプログラム」の支援で、CO2を排出せずに製造した水素の大規模輸出に向けて詳細計画をもたらしたいとしている。

(参照資料:エクセロン社DOENel Hydrogen社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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