原子力産業新聞

海外NEWS

フィンランドのロビーサ発電所で2回目の運転期間延長に向け環境影響評価

09 Sep 2021

ロビーサ原子力発電所 ©Fortum Power and Heat Oy

フィンランドの経済雇用省は9月6日、国内で稼働するロビーサ原子力発電所1、2号機(各ロシア型PWR=VVER、53.1万kW)の運転を2050年頃まで、それぞれ約70年間継続した場合と、現行の運転認可が満了する2027年と2030年に永久閉鎖した場合の環境影響評価(EIA)報告書を事業者のフォータム社から受領した。

この報告書でフォータム社は、これら2つの選択肢が及ぼす影響、特に周辺住民の生活条件や福祉、健康に関する影響や、地下水や漁業、景観など周辺環境に対する影響を評価した。また、運転期間の延長や廃止措置にともない排出される低・中レベル放射性廃棄物(LILW)についても、最終処分場の操業期間に影響が及ぶため、その影響評価結果を盛り込んでいる。

同省は今後、この報告書に関する関係省庁や機関からの意見を9月20日から11月18日まで募集し、一般市民や地元コミュニティを交えた公開ヒアリングを10月7日に地元ロビーサで開催する。経済雇用省としての結論は来年1月に公表される。

1977年と1980年に送電開始したロビーサ1、2号機はともにVVERであるため、公式の運転認可期間は30年である。ただし、計測制御(I&C)系には西欧企業製のデジタル式システムを採用するなど、改良が加えられている。フィンランド政府は、1号機が運転開始して30年が経過した2007年7月、フィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)の助言を受けて、両機の運転期間をそれぞれ2027年と2030年まで20年間延長することを承認。その際は、延長期間中にそれぞれ2回、大掛かりな安全評価を実施するようフォータム社に義務付けている。

フォータム社の今回の発表によると、同発電所は2020年にPWRとしては世界最高レベルの平均設備利用率87.7%を記録しており、年間発電量はフィンランドの総発電量の約10%に相当する78億kWhだった。このように同発電所はフィンランドの重要電源の一つであることから、フォータム社は過去5年にわたって同発電所で約4億5,000万ユーロ(約586億円)の投資を実施してきた。2020年8月からは、両機それぞれでさらに最大20年運転期間を延長し、1号機で73年間、2号機で70年間運転するか否かでEIAを実施するため、経済雇用省に申請書を提出し手続きを開始していた。

同社のこのプログラムに関し、経済雇用省は同年11月に声明文を発表しており、同発電所の経年劣化管理について一層詳細な評価を行うことと、地球温暖化に対しても配慮することをフォータム社に要請。同省はまた、放射性廃棄物関係の事故が発生するのを防止し、その影響を緩和することについても評価の実施を求めた。フィンランドでは現時点で、運転期間の延長や廃止措置により、新たに発生する放射性廃棄物や使用済燃料の貯蔵容量が不足しているため、容量確保に関するスケジュールや処分の代替オプションについても、関係情報をEIAに含めて欲しいと要請していた。

(参照資料:フィンランド経済雇用省フォータム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

cooperation