原子力産業新聞
NECG Commentary
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米国各州にみる原子力収益の確実性向上措置

02 Mar 2015

米国の複数の州では、自由化環境下におかれた原子力発電所の収益の確実性を高める政策措置を取ることで、原子力の早期閉鎖を防止しようとしている。本稿ではニューヨーク、アイオワ、オハイオ、およびイリノイの4州で取られている政策措置について述べる。筆者の2015年2月4日のワールド・ニュークリア・ニュース(World Nuclear News: WNN)での論説「原子力は自由化電力市場で成功できるか?」では、自由化電力市場では収益が不確実であり、これら自由化市場が原子力発電と相容れないものになっていることを説明した。

電力事業ならびに卸売電力市場が改革・再編された自由化地域内で運転している原子力発電所は財政的困難に直面している。こうした自由化環境下にある原子力発電所の中には、例えばキウォーニ発電所やバーモントヤンキー発電所のように既に早期閉鎖されたものがあり、さらに他にも閉鎖の恐れがある発電所が複数ある。自由化電力市場の地域においても、小売電力供給事業者は今なお州政府の規制下に置かれている。本稿では、自由化環境下で運転中の将来閉鎖される恐れがある原子力発電所が確実な収益源を確保できるよう、小売電力供給業者に対して州が規制をかけている(あるいは今後規制する可能性がある)4つの州の状況について説明する。

ニューヨーク州

R.E.ギネイ原子力発電所は、ニューヨーク州の自由化環境下にあり、NYISO卸売電力市場で電力を販売している。ギネイ発電所は、収益の改善が見込まれなければ早期閉鎖されるかもしれないが、それによって発電所の地元のみならず、地域全体の送電網の信頼性に問題が生じることになる。ニューヨーク州公益事業委員会(NYPSC)は、その規制下にある電力供給事業者であるロチェスター・ガス・アンド・エレクトリック(RG&E)社に対して、ギネイ発電所と協定締結の交渉を行うよう指示し、ギネイ原子力発電所の運転を継続させることで系統信頼性問題の発生を防止しようとしている。

前述の通り、電力系統の信頼性を維持するためにギネイ発電所が必要であり、同発電所が信頼性支援役務協定(RSSA)交渉を開始することは妥当であると考えている。さらに、2014年10月23日付でギネイ発電所は宣誓供述書を提出し、その中で現在、NYISO市場での発電容量と発電電力の販売から得られる売上は同発電所の運転継続費を賄うのに十分でないことを明らかにしている。この運転継続費には、今後必要となる改良工事などの新規資本投資が含まれている。もしRSSAが締結できなければ、同発電所は可及的速やかに閉鎖されることになる。こうした点が確認されたことから、ギネイ発電所がRSSA締結に向けて交渉に入ることには正当性があると結論づけている[1]ニューヨーク州公益事業委員会;事案14-E-0270 - … Continue reading

交渉の結果、ギネイ発電所とRG&E社の間でRSSAが締結された。2015年2月13日、RG&E社はNYPSCに対して要請書を提出し、ギネイ発電所とのRSSAを承認し、かつ同RSSAにかかる支払金はRG&E社電力需要家から回収することを認めるよう求めた。しかし、RG&E社がRSSAにかかる費用を回収することにより電力料金は「大きく変化」することとなるため、NYPSCは費用回収を含む料金改定案承認を一旦保留し、この料金改定について別途公聴会を開催することとした。2015年2月24日、RG&E社の料金改定申請に関する公聴会の日程と、同公聴会での陳述人、ならびにそこでの論点を決める会議の開催通知が発行された。

アイオワ州

2005年、デュアン・アーノルド原子力発電所(DAEC)はNRCによる当初の運転認可の期限が切れる2014年2月まで有効な電力売買契約を含めて、FPL(現ネクストエラ・エナジー社)に売却された。その後、2010年末に同発電所は2034年2月まで運転延長する認可をNRCから取得した。2013年にアイオワ州電力委員会は、インターステイト・パワー&ライト(IP&L)社がDAECとの長期電力契約をさらに12年間延長する契約変更を認可した。州規制当局は、この契約変更を有益なものとして認可を与えた。

ウィスコンシン州のキウォーニ原子力発電所の閉鎖からも明らかなように、ガス価格の低下によって原子力発電の経済環境が変化している。PPA延長がなくとも、デュアン・アーノルド発電所(DAEC)が生む便益を受容できるかどうかは自明ではない。IP&L社とネクストエラ社間で、買電側が発電費用を負担する協定が合意に至ればDAEC の運転継続が可能となり、IP&L社の電力需要家、および一般地域住民(特に、リン郡の住民)に対して経済的にも経済面以外でも大きな利益を生むことになるから、両者にはそうした合意に至ることが期待されている[2] … Continue reading

アイオワ州電力委員会は、電力利用者への経済的影響に加えて、DAECが運転継続することによって地元雇用を含む様々な便益が生じることについても考慮に入れて検討を行った。

オハイオ州

オハイオ州では、ファーストエナジー社が料金規制対象外の同社子会社であるデービス・ベッセ原子力発電所と、料金規制下にある同社の小売電力供給子会社の間で新たな長期電力契約を締結する申請をオハイオ州公益事業委員会(PUCO)に対して提出した。この電力契約案は、双方向ヘッジ契約や差金決済取引と類似である。この契約は、電力市場価格が低い場合にデービス・ベッセ原子力発電所に追加の収入をもたらし、一方電力市場価格が高い場合には電力消費者に利益をもたらす。契約によって生じる費用、あるいは利益(すなわち電力市場価格との差額)は、全需要家が適用を受ける条項(オハイオ州ではライダーと呼ばれる)に基づき全電力需要家に割り振られる。オハイオ州の他の電力会社は石炭火力発電所の電力売電契約についてこれと同様の提案をしたが、2015年2月25日、PUCOはこれについては否認する裁定を下した。しかし、この裁定の中で、PUCOは提案にあるような非規制の発電子会社と規制下にある小売電力子会社の間で電力売買契約を締結すること自体は合法であり、もしもそうした電力売買契約が小売電力利用者にとって利益となるならば認可される可能性があることを明らかにした。

しかし、州公益事業委員会は、PPAに基づく料金条項案は、その内容が適切に設定されるなら、標準サービス(Standard Service Offer:SSO)が顧客向け落札価格の上下変動を平準化する上で有効で、それにより卸売市場の価格変動から需要家を保護できる可能性がある、と考えている。特に異常気象時の電力料金を真に安定させる重要な金融的ヘッジを提供することになるような合理的なPPAに基づく条項案は電力需要家にとって価値があり得ると認識している[3]オハイオ州公益事業委員会、意見&命令、事例番号13-2385-EL-SSO、2015年2月25日、25ページ

デービス・ベッセ原子力発電所の電力売買契約案は現在、PUCOで審査中であり、採決は2015年4月または5月に行われる予定である。

イリノイ州

イリノイ州議会は、閉鎖の恐れがある自由化環境下におかれた原子力発電所について詳細な報告書を作成するよう州政府機関に命じた。この詳細な報告書に基づいて、下院法案3293号[4]イリノイ州第99回州議会、2015年および2016年、HB3293号、2015年2月27日が提出された。この法案によって、新たなイリノイ州・低炭素電源構成基準(LCPS)が設定されることになる。このLCPSによってイリノイ州の規制下にある小売電力供給業者は、販売電力の70%について低炭素エネルギー・クレジットを取得することが義務付けられる。LCPSの対象に含まれる低炭素エネルギー源には、風力、太陽光、水力、潮汐力、波力、クリーンコール、および原子力が含まれる。LCPSによって発生する費用は小売電力需要家が負担することになる。同法案は、イリノイ州にある原子力発電所の時期尚早な閉鎖によって様々な悪影響がでることを指摘した上で、LCPSを設定することでそれを防止できるとしている。

「温室効果ガス排出量の増加」

「イリノイ州の電力供給信頼性に対する重大な悪影響」

「地域の経済情勢への悪影響」

イリノイ州LCPSは、自由化環境下で閉鎖の恐れがある原子力発電所の早期閉鎖を防止するのみならず、米国環境保護庁が将来課すと考えられる炭素排出量に関する規制を同州が順守する上でも有効である。

まとめ

ここで述べたとおり、自由化環境下にある原子力発電所でも州が政策措置を取ることで収益の確実性を高めることができる。発電所が得る追加収益は、州の規制を受ける小売電力需要家から回収されることになるが、自由化環境下で閉鎖の恐れがある原子力発電所を運転継続すれば以下のような便益が得られることから、それは許容されると考えられている。

上記4つの例はすべて、自由化環境下では原子力発電所の運転継続を支えるに十分な収入を卸売電力市場から得ることはできないということを示している。これらのアプローチは、長期的な発電計画や、電源と販売を垂直統合した場合の利点など、卸売電力市場からは得ることができない効果を、仮に部分的にせよ小売電力需要家にもたらすものである。

 

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脚注

1 ニューヨーク州公益事業委員会;事案14-E-0270 - R.E.ギネイ原子力発電所の運転継続に関する提案を検討する手続き開始の請願書;信頼性支援役務協定の交渉を指示し、関連する事実認定を行う命令;2014年11月14日発令・施行;22ページ
2 アイオワ州商務省電力委員会;「インターステイト・パワー&ライト(IP&L)社とFPLエナジー・デュアン・アーノルド社に関して」;登録番号SPU-2005-0015およびTF-2012-0577;2013年1月31日に出された命令;38ページ
3 オハイオ州公益事業委員会、意見&命令、事例番号13-2385-EL-SSO、2015年2月25日、25ページ
4 イリノイ州第99回州議会、2015年および2016年、HB3293号、2015年2月27日

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