原子力産業新聞
NECG Commentary
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日立、英国原子力計画を凍結

トム・オサリバン氏による寄稿

先週末、私は学界関係者、学生、陸海軍関係者20名ほどを率いて2011年3月に津波で大規模な被害を受けた福島県にある福島第一原子力発電所を訪問してきた。福島県は日本で3番目に大きな面積を持つ県で、バルカン半島の小国であるモンテネグロとほぼ同じ広さだ。同県は日本海にほど近い地域から太平洋岸まで広がっており100km以上に及ぶ沿岸の長さで太平洋と接している。

私は被害を受けた発電所内の多くの場所で日本で最も有力なメーカー企業の一つである日立製作所の名前を目にした。我々の訪問の前日、アイリッシュ海に面する北ウェールズのウィルファ原子力発電所への投資を日立が打ち切ることになるであろうという憶測から東京証券取引所で日立の株価は8%上昇していた。

実際に東原敏昭日立製作所社長は先週、ウィルファ原子力発電所への日立の投資を「凍結」し、ウェールズでの原子力プロジェクトに対してこれまで投資した30億ドルを損失計上すると発表した。凍結の理由は投資者が集まらなかったことと、計画の収益性にも懸念があったことだと思われる。この損失計上で日立の2018年当期の純益はこれまでの予測から60%近く減少することになる。日立の時価総額は300億ドル、その従業員数は30万人以上、日本の労働総人口の約0.5%を傘下に擁している。去年、日立は同社過去最大の海外ビジネス買収となる ABB 社の電力インフラ・ビジネスの一部門の64億ドルでの買収も発表している。

もう一つの英国原子力プロジェクトであるカンブリア州ムーアサイドの原子力プロジェクトから東芝は既に撤退を決めており、加えて昨年12月には三菱重工もトルコでの原子力プロジェクトを断念すると報道されていることから、今回の日立の英国プロジェクト凍結で実質的に日本の国際原子力プロジェクトへの参画は全てがなくなることになる。この結果、ロシアと中国が世界の新設原子力市場の中心を占めることとなると思われ、また最近、韓国の電力独占企業である韓国電力もアブダビの総出力530万kWの原子力プロジェクトを完成させており、韓国電力はそのプロジェクト工期と予算額を守ったとされている。

今年の3月で福島事故から8年が経過することになるが、今も福島は風評、実害含めて大震災の被害と苦闘している。また先進国のグローバルな原子力企業を見ても、米国ではウエスチングハウスが経営破綻し、昨年は電力規制州であるサウスカロライナ州の電力会社 SCANA 社がドミニオン社に身売りせざるを得なくなり1)(訳注) SCANAは同社サマー原子力発電所で2基のAP1000建設を行っていたが、WH社の経営破綻後、建設中止を決定、だが既投資額の料金回収が認められず苦境に陥っており、ドミニオンによる買収で経営破綻を回避したとされる。、さらに英国の最近のプロジェクトのキャンセルで同国の原子力へのコミットメントの土台が蝕まれる可能性もあるなど、今も事故の影響を受けて動揺し続けている。

日本の原子力はいまだに再稼働の途上にあるが、日立の東原社長は、日立はそうした国内プラントの再稼働や、国内で進む旧型炉の廃炉作業に企業として引き続き参画し続けることにコミットするとしている。また日立の取締役会会長であり、また経団連の会長でもある中西宏明会長は、日本の原子力政策についてもっとオープンな議論が必要だとしている。福島で被害を受けた原子炉は元々GE社と日立が建設しており、40~50年もの長期と2000億ドル以上の工費を要するともされる福島の廃炉作業でも日立は東芝とともに重要な役割を担っている。

こうした原子力を巡る動向については引き続きウオッチして共有しつつ、議論をしていきたいと思う。

トム・オサリバン
Mathyos Global Advisory
Energy-Security-Infrastructure
Tokyo
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脚注   [ + ]

1. (訳注) SCANAは同社サマー原子力発電所で2基のAP1000建設を行っていたが、WH社の経営破綻後、建設中止を決定、だが既投資額の料金回収が認められず苦境に陥っており、ドミニオンによる買収で経営破綻を回避したとされる。

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