原子力産業新聞
NECG Commentary
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またしても汚い電気の勝利

31 May 2019

電力市場自由化で原子力発電所が早期閉鎖に追い込まれ、米国の電源はさらに汚くてリスキーなものになってきている。それは米国電力システムにとって実に悪い知らせだ。

2034年4月までの運転がNRCにより認可されているにもかかわらず、2019年5月エクセロン社はスリーマイル・アイランド原子力発電所2号機の早期閉鎖を決定した。また同様にマサチューセッツ州のピルグリム原子力発電所も2032年6月までの運転がNRCにより認可されているにもかかわらず2019年5月に閉鎖された。

国際エネルギー機関(IEA)の報告書「クリーン・エネルギー・システムにおける原子力発電[1]訳注:2019年5月30日付原子力産業新聞海外ニュースに概要がある。は、持続可能な低炭素電力システムに移行していくうえで原子力が必要不可欠であること、そして全ての既設原子力発電所は安全上可能な限り運転を継続し続けるべきであることを強く主張している。

稼働中の原子力発電所を閉鎖すればその分の電力は汚い火力発電で代替されることになることから必ず大気排出量は増える。

米国内で稼働中の原子力発電所を所有する電力会社にとってみると今の卸電力市場価格では当座の運転に必要な費用すら賄うことができず、電力市場での原子力の電力売電で損失を出していることから、原子力発電所が次々と早期閉鎖されている。

米国の電力市場は短期的に卸電力価格を低下させることだけに焦点を合わせたものとなっている。この結果、そうした自由化電力市場は以下のような弊害を生むこととなる。

果たして米国は汚くてリスキーな電力を供給するように設計された電力市場を本当に望んでいるのであろうか。

 

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ニュークリア・エコノミクス・コンサルティング・グループ(NECG)は、原子力発電事業に関する経済、ビジネス、規制、財務、地政学、法律など、多様で複雑な課題を掘り下げて分析している。我々が依頼元に提供する報告は客観的かつ厳格な分析に基づくものであり、かつそれらは実業界での経験を基にまとめられている。

脚注

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