原子力産業新聞
NECG Commentary
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ディアブロキャニオン発電所の廃炉

11 Jan 2018

本稿は「グリーン原子力を推進するカリフォルニア市民」(CGNP1)Californians for Green Nuclear Power, Inc.)のセントラル・コースト2)(訳注)カリフォルニア州中部の太平洋沿岸地域政府交渉担当を務めるジーン・A・ネルソン博士による寄稿である。CGNPはパシフィック・ガス・アンド・カンパニー(PG&E社)のディアブロキャニオン発電所(DCPP3)Diablo Canyon Power Plant)の運転継続を強く主張している。

ディアブロキャニオン発電所の所有者であるPG&E社は、同発電所各号機が当初NRCから得た40年間の運転許可が切れる2024年と2025年に各号機を閉鎖する申請をカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC4)California Public Utilities Commisssion)に提出した。本日、本件についてのCPUCの決定が出されるものと予想されている5)(訳注)2018年1月11日CPUCは、DCPP閉鎖計画を承認 関連情報:原子力産業新聞1月18日付け。 

背景

2017年11月8日、CPUCのピーター・V・アレン行政法判事は申請案件16-08-006号6)申請案件16-08-006号-パシフィック・ガス・アンド・カンパニーのディアブロキャニオン発電所廃炉申請、「共同提案」の実施、並びに提案されたルール策定メカニズムを通じた関連コストの回収(U39E)に対する「決定案」を提示した。この決定案は以下の点(それ以外にも多くの点が示されている)を含むものであった。

この決定案は、カリフォルニア州の長期総合電源供給計画上、ディアブロキャニオン早期廃炉7)2024年ないし2025年の閉鎖は当初のNRC運転認可期限に合致したものではあるが、実質的に全ての米国原子力発電所は20年間の許認可更新を申請し、それらの申請は認可されている。が持つ意味合い、あるいはそれがカリフォルニア州の温室効果ガス放出量に対して与える影響を精査することもなく、ディアブロキャニオンの2024年ないし2025年の早期廃炉を認めたものである。最終口頭弁論は2017年11月28日にCPUC本部で行われ、それへのコメント締め切りは同年11月29日、またそれへの回答期限は12月4日とされた。2017年12月14日、サンフランシスコのCPUC本部で開催されたCPUC公開会合でこの決定案についての採決がなされる予定であったが、最終段階で少なくとも委員の一人が異議を唱え、採決は2018年1月11日に延期された。決定案の内容については需要家の短期的な負担額について一部改定がなされた。すなわち「従業員雇用維持プログラム」として認められた年間支払い額を給与の25%相当から15%相当に減額するなどが変更された。また「地域影響緩和プログラム」として計上された8千5百万ドルは需要家負担にはしないこととされた。

CGNP

「グリーン原子力を推進するカリフォルニア市民」(CGNP)は2013年に設立された非営利カリフォルニア教育法人である。ジーン・ネルソン博士はボランティアとして同法人の政府交渉担当を務めている。同氏は商用原子力発電分野の博士号を有しており、同法人の技術的報告を取りまとめている他3名のボランティアも博士号を有している。またCGNPは極めて高い実力を持つ複数の環境問題専門の弁護士からも助言を得ている。

CGNPはディアブロキャニオン発電所を2025年以降も運転継続することを提唱している。

上記の申請案件16-08-006の審判において、約50の参加者の中で唯一CGNPが反対意見を述べた。CGNPはその調査結果を膨大かつ入念な証拠として取りまとめ、申請案件16-08-006につき開催された全ての口頭弁論に積極的に参画した。環境問題ならびにカリフォルニアの電力需要家の利益を踏まえたこれまでのCGNPの主張は、既に「決定案」の形勢に対して極めて有益な影響を与えることとなっている。またCGNPは商用原子力発電所に関する米国連邦エネルギー規制委員会(FERC)の最近の審理にも原子力発電推進の立場で参画している。

問題の核心

2017年1月末までの半年間について、CGNPがカリフォルニア州独立系統運用機関(CAISO8)California Independent System Operator)から得た日々の公式発電実績記録を一覧表にまとめてみると、カリフォルニア州の風力及び太陽光発電の稼働率は州全体でみても20%に過ぎない。カリフォルニア州の政策立案者達はそれがどのような意味を持つかについて、きちんと理解していないように思われる。また炭酸ガスを放出しないディアブロキャニオン発電所によるこの半年間の発電電力量はカリフォルニア州内全ての太陽光発電(定格容量1,000万kW)による電力量の約108%に相当し、あるいは州内全ての風力発電(定格容量600万kW)による電力量の180%に相当することについても、州の政策立案者達はきちんと理解しているとは思えない。このようにディアブロキャニオン発電所を止めることはカリフォルニアの環境に対して重大な影響を与えることになる。以下はCPUCの申請案件16-08-006の審判においてCGNPが提出した分布図の一部である。同図ではカリフォルニア州内太陽光、風力、及び太陽熱発電(イバンパー発電所、太陽熱に併せて年間10億立方フィートの天然ガスも燃焼している)の日々の発電電力量をディアブロキャニオン発電所のそれと比較したものである。同図から明らかなように太陽光や風力の不規則な変化に対応するためには大きな(そして費用がかさむ)系統運用が必要となるのに対し、ディアブロキャニオン発電所は常に一定で、また必要とされる電力を供給していることがわかる。


また、CGNPの調査によればカリフォルニアでは系統大での電力貯蔵が行われていないことがわかっている。それは恐らくカリフォルニア電力市場設計に起因していると思われる。米国エネルギー情報局(U.S. EIA)によれば、カリフォルニア州内の2か所の大規模揚水発電所(ヘルムス揚水発電所とキャスティーク揚水発電所)は年間ごく少量の発電を行っているに過ぎない。それは揚水発電所が系統電圧ならびに周波数調整能力を提供することで電力市場からより大きな補填を受けているためだと思われる。(しかもディアブロキャニオン発電所は図の左にあるCAISOが定めた補助負荷集約点9)Sub LAP(Sub Load Aggregation Point): (訳注)補助負荷集約点は地域毎の混雑料金設定などのために既定負荷集約点(Default LAP)を更に細分化しCAISOが定めたもの。ZP26区域の電圧並びに周波数安定度維持に大きく貢献しているにもかかわらず、一見したところこうした補填の対象からは除外されていると思われる。ディアブロキャニオン発電所は図中のZP26区域の南西端に位置する。)ヘルムス揚水はカリフォルニア州フレズノの東方約50マイル、シエラ山脈の麓、図中のNP15区域に位置している。(パス15送電線10) (訳注) 「パス15送電線」はカリフォルニア州内の南北連携送電線の北側)CAISOは最近、カリフォルニア州内のバッテリー蓄電の日々の実績をウェブに掲載している。しかし世界第6位の経済規模と4,000万人にも近づこうとする人口増加をしているカリフォルニア州内の膨大な電力需要に対して、こうしたバッテリー蓄電は現状では3ないし4桁ほども規模が小さなものに過ぎない。ヘルムス揚水の定格容量は121万2千kWであるが、(それはディアブロキャニオン発電所の定格容量224万kWの半分以上である)1984年から2017年のディアブロキャニオン、ヘルムス、及びキャスティーク各発電所の年間発電電力量グラフを見ると、ディアブロキャニオン発電所が年間ほぼ180億kWhの発電を行っているのに対し、ヘルムスのそれは極めて少量であることがわかる。CGNPは申請案件16-08-006の審議に参加したが、その審議の過程でヘルムス揚水がこのように低稼働である理由について、ヘルムス揚水の所有者であるPG&E社に対し公式にデータ提示を要求した。しかしPG&E社はこのCGNPのデータ提示要求を拒絶した。

2012年1月までカリフォルニア州サンオノフレ原子力発電所(SONGS)が発電していた年間180億kWhの、高品質で給電指令が可能でしかも炭酸ガスを放出しない電力を、低品質で給電指令に従うこともできず、しかも年間数百万トンもの炭酸ガスを環境へ放出する火力発電でバックアップをせざるを得ない太陽光や風力発電によって置き換えることに対して、これまで国並びに州はエネルギー政策を通じてインセンティブを与えてきた。そしてカリフォルニア州の2025年以降の計画では、ディアブロキャニオン発電所の給電指令可能な年間180億kWhの発電電力についてまたこれと同じことをやろうとしている。近年ディアブロキャニオン発電所は100%を超える年間稼働率を達成していた。ディアブロキャニオン発電所は安全で信頼性と耐久性に富み、経済的で炭酸ガスを放出しない電源である。2016年にアイダホ国立研究所が行った原子力発電に関する経済性調査に際してNECGはデータ提供を行った。その中でディアブロキャニオン発電所の発電原価は2.71¢/kWhであったが、それはイバンパー太陽熱発電所の運営会社がPG&Eと締結した長期売電契約単価である20¢/kWhのほぼ10分の1であった。

バックダウンモード

これまで述べてきた実績からカリフォルニアの太陽光と風力発電は、全体のほぼ80%に相当する時間は発電しておらず、その期間は火力発電によってバックアップされていることがわかる。そしてこうした火力発電のほとんどは「バックダウンモード」(つまり高温待機モード)で運転されることになる。すなわち風力にせよ太陽光発電にせよ、いずれも出力が不規則に急減しやすいため、そうしたバックアップ火力は指令があれば瞬時に発電できるように待機していなければならない。その結果、カリフォルニア州内には大容量の太陽光ならびに風力発電所が設置されているにもかかわらず、それと同量の1,600万kWの天然ガスだけを使用する発電所とほぼ同等となり、炭酸ガス放出量はほとんど減っていないということになっている。火力発電に比較して炭酸ガス放出量を減らせることが太陽光や風力発電を導入する大きな理由であったはずである。大きな資本を投じて造る太陽光や風力は何らかの効果があると一般の人たちが信じている(それはこれまで示してきた実績からは裏付けることができないことなのであるが)ことから、火力発電事業者もまた太陽光と風力発電には価値があると評価しているということであろうか。

結論-次のステップ

これまで簡単に述べた論拠をとりまとめれば、ディアブロキャニオン発電所を安全に運転継続することで得られる環境上の便益、あるいは需要家にとっての便益は、これまで一般的に原子力発電所がもたらしてきた便益の一つの例示であるということができる。追加でさらに技術的な詳細について知りたい方は、下記のメールアドレスでジーン・ネルソンにお問い合わせ下さい。申請案件16-08-006に関連して提出した一連のCGNP文書のリンク先をお教えします。

米国内の他地域の原子力発電所もこれと同様の窮状に置かれることが予想される。ワシントン州のエナジー・ノースウエスト社のコロンビア発電所の安全な運転継続を提唱している例など、どのようにすればうまく市民が声を上げて運動を展開することができるかについて情報を広く共有することが有益であるとCGNPは考えている。こうした情報交換は原子力事業者が運転上のベストプラクティスについて情報交換を行っているのと類似の活動とみることもできる。そうした情報をCGNPまでお教えいただければ大変にありがたい。CGNPは原子力推進の情報センターとしての役割を担っていきたいと考えている。CPUCが申請案件16-08-006を承認する(つまりディアブロキャニオンの2024年ないし2025年の廃炉を承認する)となった場合、CGNPはこれまで提出した文書を根拠にそうした決定に対して異議を申し立てる予定である。CGNPはその進捗状況についてNECG読者の皆様に対し引き続き情報提供を続けるつもりである。またCPUCの決定に対する異議申し立てについていかなる形にせよCGNPをご支援頂けるなら大変にありがたい。

お問い合わせ:

Gene A. Nelson, Ph.D.

Central Coast Government Liaison

Californians For Green Nuclear Power

1375 East Grand Ave, Suite 103 #523 Arroyo Grande, CA 93420

Tel: +1 (805) 363 4697

E-mail: Government@CGNP.org

 

脚注   [ + ]

1. Californians for Green Nuclear Power, Inc.
2. (訳注)カリフォルニア州中部の太平洋沿岸地域
3. Diablo Canyon Power Plant
4. California Public Utilities Commisssion
5. (訳注)2018年1月11日CPUCは、DCPP閉鎖計画を承認 関連情報:原子力産業新聞1月18日付け
6. 申請案件16-08-006号-パシフィック・ガス・アンド・カンパニーのディアブロキャニオン発電所廃炉申請、「共同提案」の実施、並びに提案されたルール策定メカニズムを通じた関連コストの回収(U39E)
7. 2024年ないし2025年の閉鎖は当初のNRC運転認可期限に合致したものではあるが、実質的に全ての米国原子力発電所は20年間の許認可更新を申請し、それらの申請は認可されている。
8. California Independent System Operator
9. Sub LAP(Sub Load Aggregation Point): (訳注)補助負荷集約点は地域毎の混雑料金設定などのために既定負荷集約点(Default LAP)を更に細分化しCAISOが定めたもの。
10. (訳注) 「パス15送電線」はカリフォルニア州内の南北連携送電線

お問い合わせ先
Edward Kee +1 202 370 7713
edk@nuclear-economics.com

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