原子力産業新聞

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三重大ほか セシウム固定化技術の実証に成功

12 May 2025

石川公一

セシウム固定化技術のイメージ

三重大学、海洋研究開発機構、帝塚山大学らによる研究チームはこのほど、高輝度レーザーを活用し、コンクリート中にセシウムを閉じ込めてガラス体を形成する「その場固定化」技術の実証に成功したと発表した。〈三重大他発表資料は こちら

現在、進められている福島第一原子力発電所廃炉に関しては、汚染水対策や燃料デブリ取り出しの他、放射性廃棄物の処理処分も長期的な課題となっており、日本原子力学会など、アカデミアでは、廃炉の最終的姿、いわゆる「エンドステート」に向け検討を行っている。今回の研究成果は、これにも関連し、廃炉に伴う廃棄物の減容に資することが期待されそうだ。

発表によると、福島第一原子力発電所で発生するコンクリート・がれきの総量は、将来的に建物の解体や燃料集合体から生じる推定量として、低表面線量率(0.0051mSv/h)のコンクリート廃棄物で約130,000㎥、中表面線量率(1mSv/h超)の廃棄物で約60,000㎥。これらの廃棄物を効果的に管理し、長期保管することが重要なことから、より効率的な減容技術の開発が不可欠となっている。

今回の研究では、放射性廃棄物の減容に向け、セシウム137(放射性同位体)を効果的に固定化することに着目。福島第一原子力発電所原子炉建屋と同じ組成のセシウム133(安定同位体)を混ぜたコンクリートに、高輝度レーザーを照射し、セシウムを固定化。物性調査・分析の結果、セシウムは、レーザー照射されたコンクリート中でガラス化されていることが示された。さらに、「電子プローブマイクロアナライザー」と呼ばれるX線分析手法により、セシウム捕捉率は実験値で99%と、従来手法による57%より遥かに高い値を確認。つまり、廃コンクリートの表面を、高輝度レーザーでガラス化し、溶融コンクリート内部の放射性物質をガラス体の中に固定化した後、ガラス体とそれ以外の物質を分離することで、効率的な減容が可能となる。研究チームは、「福島第一原子力発電所の廃炉を支援する優れた可能性を秘めている」と、期待を寄せている。

なお、今回の研究開発には、東電設計や、産業廃棄物処理で実績のある太平洋コンサルタントからも協力を得ているという。

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