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米テキサス州 次世代AI向けの原子力発電導入で韓国企業と提携

14 Aug 2025

桜井久子

Ⓒ Fermi America

米テキサス州を拠点とするフェルミ・アメリカ(Fermi America)社は728日、韓国の現代EC(現代建設)社と覚書(MOU)を締結。テキサス工科大学(TTU)システム[1]テキサス州にある州立大学群との提携によって実施される、次世代AIへ電力供給する民間送電網プロジェクトのうち、原子力コンポーネントの計画・開発において、現代EC社と協力する。

フェルミ・アメリカ社は、次世代人工知能(AI)の実現に不可欠なギガワット(GW=100kW)規模の電力網の建設を主導する米国のエネルギー開発会社。R. ペリー元米エネルギー省長官・元テキサス州知事が共同創設者に名を連ね、TTUシステムに世界最大の統合エネルギーとAIキャンパス(ドナルド J. トランプ先進エネルギー・インテリジェンス・キャンパス)の建設を加速させている。

フェルミ・アメリカ社のT. ノイゲバウアー共同創設者と現代EC社のイ・ハンウCEOが韓国ソウルで「先進エネルギー・インテリジェンスキャンパス共同開発のための覚書(MOU)」に調印した。本MOUにより両社は、原子力ベースのハイブリッドエネルギープロジェクトの共同計画、プロジェクトフェーズごとに詳細な作業パッケージの開発、フロントエンドエンジニアリング設計(FEED)、および年内の設計、調達、建設(EPC)契約の締結など、プロジェクトのさまざまな分野で協力することとしている。

フェルミ・アメリカ社が手がける同プロジェクトは、テキサス州アマリロ郊外の約2,335の敷地に世界最大とされる民間初の電力網キャンパスを建設するもの。大型炉のウェスチングハウス社製AP1000×4基(4GW)SMR2GW)、ガス火力複合発電所(4GW)、太陽光発電とバッテリーエネルギー貯蔵システム(1GW)を組み合わせた計11GWの独立電力供給インフラと、この電力に連携される大規模なハイパースケールAIデータセンターを段階的に導入する計画であるという。既存の電力網よりも安定性の高いエネルギーキャンパスとして、次世代AI技術を支える特化システムと位置づけられている。

フェルミ・アメリカ社は、現代E&C社が韓国国内で18基の原子炉を建設、アラブ首長国連邦のバラカ原子力発電所で4基の原子炉を手がけた実績を有する他、韓国で2基、ブルガリアで2基の原子炉も現在、建設・設計段階にある点に着目。特に、バラカ・プロジェクトでは、予定より早く、安全かつ予算内で全4基を稼働させたことを評価している。

ノイゲバウアー共同創設者は、「現代E&Cチームと提携してAIの未来を支えていく。米国には練習している時間はない。実績あるパートナーと協力することが不可欠。現代E&Cは安全でクリーンな新型原子力を計画・建設してきた成功実績を持っている」と強調した。

現代E&C関係者によると、同プロジェクトの初期段階から参加し、多様なエネルギーインフラを活用した世界最大の統合エネルギー・AIキャンパスの造成に貢献できるという点で意義があると指摘。これを重要な出発点として、米国だけでなくグローバル市場でも様々な新エネルギー分野のビジネスチャンスを積極的に確保し、競争力を持続的に強化していくとしている。

なおフェルミ・アメリカ社は6月17日、AP1000×4基の建設に向けて、米原子力規制委員会に建設運転一括認可(COL)を申請。同申請は記録的な速さで審査受付されたという。現代E&C社と提携することで、来年にも原子力発電複合施設の建設を開始し、初号機を2032年までに稼働させたい考えだ。

脚注

脚注
1 テキサス州にある州立大学群

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