米WE社 英国でサプライチェーンを拡大
11 Sep 2025
米ウェスチングハウス(WE)社は9月2日、英国企業6社と了解覚書(MOU)を締結した。英国において、同社のAP1000ならびに小型モジュール炉(SMR)のAP300を採用する新規原子力発電プロジェクトの実施を目指す。WE社は、2050年までに国内で合計2,400万kWeの新規原子力発電所を稼働させ、国内電力需要の4分の1を原子力でまかなうという英国の野心的な目標を支援するために、英国でのサプライチェーンを強化する考えだ。
MOUを締結したのは、William Cook Cast Products、Trillium Flow Technology、Curtiss-Wright Controls、Boccard UK、Bendalls Engineering、Sheffield Forgemastersの6社。今回の合意により、同6企業からのバルブ、ポンプ、アクチュエーター、機械・電気配管および計装(MEPI)モジュール、圧力容器、タンク、熱交換器、配管、鋳造・鍛造鋼部品などの主要な原子炉部品の供給を想定している。
WEエナジー・システムズ社のD. リップマン社長は、「今回の合意は、当社が英国を主要パートナーとして原子力事業を展開するうえで重要なマイルストーン。これらサプライヤーとの協力により、英国の新規建設での技能労働者の雇用創出や、欧州や国際的なプロジェクトへの支援にもつながり、経済的利益が見込める」と語った。
WE社が2023年5月に発表したAP300は、同社のAP1000をベースとした1ループ式の30万kWeのPWRで、2030年代初頭に初号機の運転開始を目指している。AP300は、AP1000のエンジニアリング、コンポーネント、サプライチェーンを活用し、許認可手続きの合理化が可能。2024年2月、WE社は、英国のコミュニティ・ニュークリア・パワー(CNP)社と、イングランド北東部のノース・ティーサイド地域にAP300×4基の建設で合意した。英エネルギー安全保障・ネットゼロ省は同年8月、AP300の包括的設計審査(GDA)への参加を承認。一方で、WE社は、英政府のSMR支援対象選定コンペからは撤退した。
サプライチェーンの他の構築事例としては、WE社は2024年12月、BWXTカナダ社と、カナダ国内外における原子力発電の新規建設プロジェクトを支援する了解覚書(MOU)を締結。BWXTカナダ社による、AP1000とAP300向けの原子炉容器、蒸気発生器、熱交換器などの主要コンポーネントの供給を想定している。同10月には、造船事業のほか、船舶修理や海上輸送を手掛けカナダのシースパン社とスプール配管や鋼鉄構造物などの原子炉コンポーネント製造に係る協力でMOUを締結している。さらに今年3月には、カナダ・サスカチュワン州のサプライヤー6社とMOUを締結し、電気機器や、鉄骨構造物など、主要な原子炉コンポーネントを製造し、カナダ国外での新規建設プロジェクトを支援する体制を整えた。
AP1000は世界で6基(中国で4基、米国で2基)が運転中である。ポーランド、ウクライナ、ブルガリアの新設プロジェクトでもAP1000が採用されており、他欧州諸国や北米でも採用が検討されている。