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アフリカ 原子力発電導入の機運高まる IAEA見通し

17 Sep 2025

大野 薫

©IAEA

国際原子力機関(IAEA)はこのほど、G20エネルギー移行ワーキンググループ向けに「アフリカの原子力エネルギーの見通し(Outlook for Nuclear Energy in Africa」を発表した。これは、G20議長国である南アフリカの要請に基づき作成されたもので、アフリカ諸国が直面する資金調達やエネルギー計画、インフラ開発の課題などに加え、アフリカのような、小規模電力系統や資本制約のある国々に適した選択肢として、小型モジュール炉(SMR)の導入可能性を強調している。

報告書によると、アフリカ大陸では現在、約5億人が電力にアクセスできず、依然として化石燃料への依存度が高い。IAEAはこうした状況をふまえ、多くのアフリカ諸国がエネルギー安全保障の強化と温室効果ガス排出削減を同時に実現するための手段として、原子力発電に注目していると指摘。現在アフリカで商用炉を運転しているのは南アフリカのみだが、エジプトでは2028年の稼働をめざして4基が建設中。さらに、ガーナ、ナイジェリア、ケニアが原子力発電の導入計画を進めており、さらに10か国が検討段階にある。IAEAによると、世界で原子力導入を検討・準備している約55か国のうち、22か国がアフリカに集中している。

IAEAは、2050年までにアフリカの総発電設備容量は大幅に増加すると予想。原子力発電設備容量については、高ケースシナリオでは2022年時点の原子力発電設備容量(190kW)と比較して、2030年までに3倍、2050年までには10倍に拡大する可能性があり、その実現には1,000億ドル以上の投資が必要になると見込んでいる。一方、低ケースシナリオでも2030年までに2倍、2050年までには5倍に増加する可能性があるとしている。

中でもSMRは、小規模グリッドや経済規模の小さいアフリカ諸国にとって、有望な選択肢とされる。その一方で、商業的に利用可能なリファレンス・プラントは現状、202312月に営業運転を開始した中国の高温ガス炉である華能山山東石島湾原子力発電所(HTGRHTR-PM, 21.1kW)ならびに20205月に営業運転を開始したロシアの浮揚型原子力発電所アカデミック・ロモノソフ(PWRKLT-40S, 3.5kW×2基)と2つのプラントに限られていることから、IAEAは今後の技術進展が普及のカギとしている。また資金面では、世界銀行やアフリカ開発銀行など国際金融機関の関与が不可欠であり、過剰債務を回避するための革新的な金融手法の検討も課題と指摘した。

IAEAはまた、アフリカ諸国が世界の主要なウラン供給国として国際市場で重要な役割を担っている点を強調。さらに、大陸唯一の原子力発電国である南アフリカの確立したサプライチェーンは、他国にとっても参考となるモデルになり得ると評価している。

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