原子力産業新聞

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南ア PBMR開発計画の再開を閣議決定

04 Dec 2025

桜井久子

ラモホパ電力・エネルギー相による記者会見
Ⓒ South African Government News Agency

南アフリカのK. ラモホパ電力・エネルギー相は1116日の記者会見で、同国独自のペブルベッド・モジュール型高温ガス炉(PBMR)の開発計画を再開する方針を閣議決定したことを明らかにした。また、PBMR技術の国産化と輸出産業化を目指して1999年に設立されたPBMR社について、国営電力会社エスコム(Eskom)から南アフリカ原子力公社(Necsa)へ移管することも発表。同大臣は、これにより南アフリカが小型モジュール炉(SMR)技術と燃料サイクル分野の「主要プレイヤーに立ち戻る」と強調した。

PBMRは3重被覆層・燃料粒子(TRISO)燃料を使用し、ヘリウムを冷却材とするSMRの高温ガス炉(電気出力16.5kW、熱出力40kW)。750℃の蒸気供給が可能で、炉心溶融の心配が無いなど高い安全性を特長とする。大型炉と比べて初期投資が少なく、送電インフラが未整備の地域にも適した炉とされる。エスコムは1993年からドイツの技術をベースに開発プロジェクトに取り組んできたが、顧客・投資パートナーの確保難航や当時の経済不況により、政府は20109月にPBMR開発計画の中止を発表。以降PBMRは、知的財産権保持のため保存整備(Care and Maintenance: C&M)状態に置かれていた。

ラモホパ大臣は今年10月、統合資源計画(IRP2025発表2039年までに約520kWeの原子力発電設備を新設する計画に言及したうえで、「アフリカでは、6億人が電気にアクセスできない。アフリカ大陸の工業化、脱炭素化計画を支えるうえで、クリーンなベースロード電源となる原子力は非常に重要な役割を果たす」と述べ、原子力の重要性を改めて強調した。さらに、今回のPBMRC&M解除の決定により人材回帰が期待されるとし、「大学や研究機関と協力して原子力科学者のパイプラインを再構築する。燃料開発研究所も再開し、高温ガス炉燃料の世界的供給に向けた商機を作っていく」と意欲を示した。

同大臣はまた、今年8月に林業・水産・環境省が西ケープ州ドイネフォンテインを新規建設サイトとして承認したことに触れ、少なくとも240kWeを建設できると説明。ドイネフォンテイン・サイトはクバーグ原子力発電所サイトに隣接しており、他サイトについても東ケープ州で調査中であるという。

Necsaは、2010年から休止していたPBMR開発プロジェクトの復活を歓迎。様々な用途向けのSMRを中心とした原子力発電開発が世界的に拡大していることは、PBMR技術の復活にとっても良い兆しであると評価した。そのうえで、NecsaL. タイアバッシュCEOは、「Necsaはこの燃料製造技術を活用し、技術と知的財産の開発に向け、戦略的パートナーと協力する用意がある」と述べ、南アフリカが再びSMR研究の最前線に立つ展望を示した。

現在、南アフリカではアフリカ大陸で唯一稼働する原子力発電所であるクバーグ12号機(PWR、各97kWe)がそれぞれ1984年と1985年から運転中。1号機は国家原子力規制委員会(NNR)から20447月までの20年間の延長認可を取得。同2号機についても、2045年11月までの延長認可を取得している。

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