原子力産業新聞

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IAEAの規制と設計のアプローチの調和が初めて具体化

26 Sep 2025

桜井久子

調印式 Ⓒ @rafaelmgrossi/ X

国際原子力機関(IAEA)の総会初日の915日に開催された、ベルギー主催のサイドイベントで、IAEAによる原子力調和・標準化イニシアチブ(NHSI)を活用した、小型モジュール炉(SMR)の国際的な共同事前認可プロセスが始動した。調印式には、IAEAR. グロッシー事務局長も出席した。

IAEAは2022年7月、SMRを始めとする先進炉の世界展開に備え、NHSIを立ち上げた。設計が標準化されることで、迅速かつ効率的に複数の国において認可され、かつ安全に導入されるために、各国間の規制と設計のアプローチを調和させる方法を追究している。

今回、NHSIの対象となったのは、第4世代の鉛冷却型小型高速炉「EAGLES-300」。国際的な事前認可パイロットプロジェクトにおいて、ベルギー、ルーマニア、イタリアの各原子力規制当局が規制アプローチの調和で連携し、IAEAはこの取組みをNHSIのパイロットプロジェクトとして支援していく方針だ。

イタリアのアンサルド・ヌクレアーレ(Ansaldo Nucleare)社、同経済開発省傘下の新技術・エネルギー・持続可能経済開発局(ENEA)、ベルギー原子力研究センター(SCK-CEN)、およびルーマニアの国営原子力技術会社(RATEN)の4者は今年6月、第4世代の鉛冷却式の小型モジュール炉(SMR)の設計と商業化に取組むため、「イーグルス・コンソーシアム(Eagles Consortium)」を設立。同コンソーシアムは、欧州の産業界のリーダーと原子力研究機関とのユニークなコラボレーションにより、ベルギー、イタリア、ルーマニアの産業のノウハウと液体金属に関する研究の専門知識を組合せ、LEANDREAALFREDという2つの主要試験施設により、第4世代の鉛冷却高速炉「EAGLES-300」(30kWe)の実証炉を2035年までにベルギーで建設し、2039年には商業化と広範な展開を目指している。

同コンソーシアムは、これまで先進的SMRの開発段階で各国の規制当局がコンソーシアムの設立からわずか3か月後という早い段階から連携したことはなく、安全要件等で最初から合意することは、規制の調和と商業化の道のりにおいて重要なステップになると強調している。SMRは国際的な展開と量産を前提に設計されているが、各国が独自の規制や手続きを維持すれば、開発者はその都度、長期にわたる認可プロセスに直面し、展開が遅れるため、SMRのスケールメリットが損なわれる。規制の調和は、より迅速で効率的かつ安全な商業化を可能にするとの考えだ。

事前認可は承認を得ることが目的ではなく、原子力規制当局と開発者が正式な許可申請前の早い段階で対話を行い、安全要件、技術的課題、規制枠組みについて相互理解を築くことが狙い。同コンソーシアムは、鉛冷却型SMRのような先進技術においては、事前認可により初期段階でボトルネックを特定するのに役立つと指摘する。一般的に、まずは安全原則といった大枠から始まり、徐々に詳細な技術議論へと進み、次の正式な認可手続きでは、各国の規制当局が炉設計について、安全性、セキュリティ、放射線防護、環境影響に関する法的・技術的要件を満たしているかを審査するという。

先進炉やSMRの安全かつ確実な導入促進を目的とした同イニシアチブにおいて最初の具体的な一歩であるとし、IAEAのグロッシー事務局長は、「欧州の原子力イノベーションにとって飛躍的な前進であり、地域協力の強力な事例だ」と語った。

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