スウェーデン 原子力利用のデータセンター導入へ
14 Oct 2025
スウェーデンのブリカラ(Blykalla)社、Evroc社、スタズビック(Studsvik)社の3社は10月6日、同国初となる原子力発電を利用したデータセンターの開発を検討するため、覚書(MOU)を締結した。これら3社の技術、インフラ、サイト運営の専門知識を組み合わせ、原子力発電所を併設したデータセンターの導入を目指している。
本プロジェクトは、スタズビック社がスウェーデン南部バルト海沿岸ニショーピング(Nyköping)に所有する原子力施設の認可済みサイトを活用して進められる。サイトには原子力に適したインフラがあり、2005年まで研究炉が稼働していた。MOUにより、同サイトにデータセンターと小型モジュール炉(SMR)を併設する商業的・技術的な実現可能性を評価、自治体や土地所有者との協議を行い、将来的な電力購入契約(PPA)の枠組みを定義。共同運営委員会を設立し、サイトおよびビジネスモデルを評価、年内に正式なパートナーシップ交渉に入ることを目標としている。
ブリカラ社は、SMRの鉛冷却高速炉「SEALER」(5.5万kWe)を開発中。出力拡大が可能なコンパクトなモジュール設計を特徴とし、2030年までに初号機の臨界を達成し、2030年代に量産を開始する計画である。経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)のSMR年次ダッシュボードでは、同社は欧州で最も成熟した先進炉コンセプトを有する企業として評価されている。今年9月には、米国で先進炉と燃料リサイクルの開発を進めているオクロ社と共同技術開発、材料、コンポーネント、非原子力サプライチェーンの構築や許認可のベストプラクティスに関する知見を共有し、高度な原子力の商業化を加速するための戦略的パートナーシップを締結。オクロ社は米国のサイトへの展開に重点を置き、最大出力7.5万kWeのナトリウム冷却高速炉のオーロラ発電所を開発中だ。
Evroc社は、ヨーロッパのハイパースケールクラウドおよび重要AIインフラ構築を手掛けており、2030年までに欧州各地で10のハイパースケールデータセンターを運営し、数千人規模の雇用を創出することを目指している。スタズビック社は、世界の原子力発電業界向けに、燃料・材料技術、炉解析ソフトウェア、除染および放射線防護、そして放射性廃棄物の処理・減容化などの技術サービスを提供している。
AI利用と電化による需要拡大で、原子力発電を活用したデータセンターへの関心が国際的に高まる中、これら3社は、スタズビック社のライセンスサイト、Evroc社のデジタルインフラ、ブリカラ社の先進的SMR技術を活用して、スウェーデンをデジタルインフラ分野の世界的リーダーに押し上げることを目指している。
ブリカラ社のJ. ステッドマンCEOはMOU締結に際し、「3社の連携は、スウェーデンがデジタルインフラ分野のリーダーとなるための大きなチャンス。SMRがAI革命に必要な安定した化石燃料フリーのエネルギーを提供できることを実証できる。スタズビック社のサイトとEvroc社のビジョンは、画期的なプロジェクトを実現するための理想的な条件を備えている」と語った。