ポーランド国営エネルギー企業 第2原子力発電所建設プロジェクトを完全管理下に
04 Nov 2025
ポーランド国営エネルギーグループ(PGE)は10月16日、民間エネルギー企業ZE PAK社から、PGE PAK原子力エネルギー(PGE PAK Energia Jądrowa= PGE PAK EJ)社の株式50%を取得し、同国の第2原子力発電所建設プロジェクトを完全管理下におくこととなった。これは、M. モティカ・エネルギー相の決定により成立したもの。
PGEのD. マルゼックCEOは、「PGE PAK EJ社を完全子会社化し、その運営を一元的に管理することで、第2原子力発電所に関する調査や分析、意思決定を行うことができる。これには、モティカ大臣の決定を含む、正式な政府の承認が必要だったが、プロセス全体は円滑に進んだ」と述べた。モティカ相は、「PGEによるPGE PAK EJ社の全株取得は、PGEだけでなく、政府も推進する戦略の実現である」と強調した。
政府は、原子力はポーランドのエネルギー移行における戦略的柱であり、安定かつ安全なエネルギーシステムの構築、化石燃料からの脱却、気候目標の達成に資するものとしている。ポーランド初の原子力発電所は国営の特別目的会社(SPV)のPEJが同国北部のポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ-コパリノに、米ウェスチングハウス社製のAP1000を3基建設する予定。現在、現地では準備作業が進められており、2028年に建設開始、初号機の運転開始は2036年、2、3号機の運転開始はそれぞれ2037年、2038年を予定している。
政府の原子力開発計画(PPEJ)では、2番目の原子力発電所の建設候補地として、同国中央部の石炭・褐炭地域であるベウハトフ地区やコニン地区の2か所が挙げられている。PGEグループの戦略でも、同地区での立地分析の実施や、トゥルフにある石炭火力発電所での小型モジュール炉(SMR)建設準備も検討されている。
PGEと国有財産省が一部出資する民間のエネルギー企業のZE PAK社は2023年4月、合弁の特別プロジェクト企業であるPGE PAK EJ社を設立。韓国水力・原子力(KHNP)との協力により、コニン地区で韓国製140万kW級PWR「改良型加圧水型炉(APR1400)」を少なくとも2基(合計出力280万kW)建設を計画し、ポーランドの気候環境省は2023年11月、PGE PAK EJ社に対し、原則決定(decision-in-principle=DIP)を発給している。
一方でKHNPのJ. ファンCEOは今年8月、韓国国会の委員会で、スウェーデン、スロベニア、オランダに続き、ポーランドの原子力発電プロジェクトからの撤退について言及。ポーランド政府と国営企業によるそれぞれの原子力建設プロジェクトが、新政権発足後に政府のプロジェクトに一本化されたことを理由に挙げていた。これに対し、モティカ大臣は、KHNPの決定はポーランド政府のいかなる行動にも起因するものではないと指摘。今年7月、エネルギー省は韓国側に対し、第2原子力発電所の競争手続きに参加するよう正式に招待し、この問題に関する公式の立場を待っていると説明した。また、すべての決定が半分民間企業である投資家にあるため、政府はコニン地区でのプロジェクトを停止する決定もしていないと補足した。
なお、ポーランドのD. トゥスク首相は今年7月下旬、内閣改造を実施し、エネルギー省を新設。産業省を吸収するとともに気候・環境省の所掌の一部を引き継ぎ、原子力部門(SMRを含む)と鉱山部門はエネルギー省に移管されている。





