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京都フュージョニアリング 実証プロジェクト「FAST」の概念設計を完了

12 Dec 2025

中西康之助

核融合発電実証を目指す産学連携プロジェクト「FAST」 ©京都フュージョニアリング

京都大学発のベンチャー企業で、核融合発電に直結する技術開発を強みとする京都フュージョニアリングは1127日、2030年代の核融合発電実証を目指す民間主導の産学連携プロジェクト「FASTFusion by Advanced Superconducting Tokamak)」全体の統括を担うStarlight Engine株式会社と、「FAST」の概念設計を完了し、その設計情報をまとめた「概念設計報告書(Conceptual Design ReportCDR)」を公開した。核融合発電装置の概念設計の完了は国内企業として初だという。

ここでの概念設計とは、核融合発電実証プラントの設計プロセスにおいて、技術的・工学的な実現可能性や安全性、経済性を評価し、プロジェクトの方向性とプラントの基本仕様を定める段階を指す。

京都フュージョニアリングによると、今後は建設を見据えた工学設計への移行と工学的な研究開発の加速に加え、サイト選定や整備、許認可手続き、長納期品の調達などを進め、2028年以降の建設開始につなげていく。今回取りまとめた概念設計は、以降のすべての活動の起点となる重要なプロセスであり、その成果をまとめたCDRは今後のプラント設計の基盤として中核的な役割を担うという。同社は、2035年に実証試験に入り、2042年ごろの商業発電を見込んでいる。

FAST
Fusion by Advanced Superconducting Tokamak)は、核融合反応を用いた発電の実証を目的に、日本国内で進められているフュージョンエネルギープロジェクト。トカマク型を採用し、技術的な成熟度が高く、コストやリスクの管理が可能な点を重視し、商業化を見据えた現実的なアプローチを取るのが特長だ。複数の大学や企業が参加し、核融合研究の第一線で活躍する研究者がすでに数多く参画している。さらに、国内の主要大学と共同研究契約を結び、プラズマ設計からプラント開発に至るまで、幅広い研究・技術開発を進めている。

FAST」プロジェクトの始動から約1年という短期間で概念設計を取りまとめたことについて、同社の小西哲之代表取締役会長は、予定通りに短期間で完了したことに安堵感を示すとともに、「国内の専門家を結集し、高温超電導マグネットや液体増殖ブランケットシステム、高効率なトリチウム燃料サイクルシステムなど、商業プラントに不可欠な新技術を取り込んだ革新的な設計に仕上げられた」と評価した。

また「安全設計や許認可、サイト選定に向けた準備も順調に進んでいる」とし、今後の建設に向けた工学設計段階では、金融機関やゼネコンなど幅広い業界との連携実績を有する同社の特長を生かし、事業活動と両立させながらプロジェクトを推進していく考えを示した。

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