原子力産業新聞

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仏NUWARD炉 欧州6か国共同安全評価のフェーズ2完了

15 Dec 2025

桜井久子

JERフェーズ2 規制当局関係者 © ASNR

仏原子力安全・放射線防護局(ASNR)は122日、フランス電力(EDF)傘下のNUWARD社が開発を進める小型モジュール炉(SMR)「NUWARD」の安全設計に関する合同早期レビュー(Joint Early Review: JER)のフェーズ2202312月~20256月)を完了し、その成果を公表した。オランダ(ANVS)、ポーランド(PAA)、スウェーデン(SSM)、フィンランド(STUK)、チェコ(SUJB)の各規制当局と共同で実施したもの。

EDFは20226月、NUWARD炉を欧州初となるJERのケーススタディとすることを発表。JERイニシアチブは、複数国で適応可能かつ許認可取得が可能な標準化設計の開発に向けて、正式な許認可取得プロセスに先立ち、規制当局との意見交換を行う枠組みだ。SMRの設計と安全性に関連する課題を早期に洗い出し、将来の審査で重要となる論点を関係国で共有することを目的としている。

設計が固まる前の早い段階で、設計者と規制当局が安全設計の考え方や技術的選択肢について認識をすり合わせ、設計者に早い段階で規制側の考えを伝えることで、後から設計変更による手戻りを防ぐ狙いがある。将来の標準化を見据えて、各国の規制当局が足並みをそろえる効果も期待できる。

フェーズ120226月~20236月)では、仏原子力安全規制当局(ASN[1]2025年1月1日、ASNとIRSNの活動は統合され、原子力安全・放射線防護局(ASNR)に改称された。の主導の下、フィンランド(STUK)およびチェコ(SUJB)が自国のエネルギー事業者がNUWARD炉に関心を示していたことから参加。NUWARD社はこのレビューの結果、より標準化された設計の開発を可能にするデータを得たとしている。今回完了したフェーズ2では、オランダ、ポーランド、スウェーデンの各規制当局も加わり、放射性物質の閉じ込め機能、事故時の放射線影響評価、臨界リスク管理、電気系統および計装制御(I&C)システムの構成など、より広範な技術的分野を議論の対象とした。評価は、NUWARD社との直接対話を通じて行われ、フェーズ1における一部の規制当局の審査結論に対するフィードバックも取り込まれた。

フェーズ2の報告書では、JERが規制当局による安全審査の効率性と対応力向上に寄与していると評価した。特に、規制枠組みの見直しを進めるこれら規制当局にとって、有益な情報源となり、規制当局が自らの手法を継続的に見直す重要性を喚起したと指摘。また、特定された相違点の大半は、規制要件そのものの差異ではなく、ガイダンスレベルや規制要件の実施方法の違いに起因することが確認されたという。さらに、特定の原子炉設計について規制当局と設計者が協議できる専門フォーラムは極めて有効であり、安全管理上の課題を早期に解決するとともに、許認可プロセスを迅速化し、JERを通じて複数国での展開を後押しする効果も期待されると指摘している。

なお、NUWARD炉の安全性に関する最終的な判断や認可は、今後、各国の正式な安全審査の中で行われる。規制当局間では現在、新たな技術テーマを対象としたフェーズ3の実施について検討が進められている。

NUWARD炉は、第3世代+(プラス)のPWRの実証技術をベースとする、電気出力最大40kWeの熱電併給型のSMR。再生可能エネルギーを補完するほか、水素生産、地域暖房、海水淡水化への利用も想定している。EDFとNUWARD社は2024年6月、プロジェクトの遅延や予算超過を避けるためにNUWARD炉の設計を見直し、既存の実証済みの技術を利用し、設計を最適化する計画を決定。今年1月には再設計作業を開始している。

脚注

脚注
1 2025年1月1日、ASNとIRSNの活動は統合され、原子力安全・放射線防護局(ASNR)に改称された。

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