IEA「重要鉱物見通し2026」を発表 原子力回帰で原子燃料サイクル投資が急務
24 Jul 2026
国際エネルギー機関(IEA)は7月16日、年次報告書の2026年版「世界の重要鉱物見通し(Global Critical Minerals Outlook 2026)」を発表した。銅やリチウム、希土類(レアアース)など主要エネルギー鉱物の需給・投資動向を分析するとともに、「原子力サプライチェーン」を重点テーマの一つとして取り上げ、原子燃料サイクル全体を通じた供給保証について詳細に分析した。報告書は、原子力発電の再拡大によるウランおよび原子燃料サイクル全般にわたる多額の投資の必要性を指摘している。
世界の原子力発電設備容量は2025年時点で約4億2,000万kW、建設中は約7,800万kWと過去30年で最高水準にある。IEAの公表政策シナリオ(STEPS)では、2050年までに設備容量は約8億kWまで拡大し、原子力発電量は倍増する見通し。こうした需要拡大への期待を背景にウラン価格は2020年以降大幅に上昇し、ウラン精鉱(U3O8)のスポット価格は酸化ウラン換算で1kg当たり約60米ドルから2024年には200米ドル超まで上昇した。報告書では「最も差し迫った制約は、採掘以降の工程、とりわけウラン転換の分野で顕在化している」とし、能力逼迫の解消には追加投資が不可欠と強調。濃縮能力も当面は充足するものの、中期的には需要増によりボトルネックになり得るとした。
次世代炉向けの燃料供給も課題に挙げた。報告書によると、小型モジュール炉(SMR)などで使用が見込まれる燃料のHALEU (高アッセイ低濃縮ウラン)1は、濃縮度が高いほど燃料1トン当たりのウラン投入量が最大4倍、濃縮作業量が最大5倍に増えるケースもあるという。現在、商業規模のHALEUの供給はロシアと中国に限られ、多くのプロジェクトが本格供給を始めるのは2030年代初頭以降と見込まれることから、SMR導入需要との間にタイミングのギャップが生じる可能性があると指摘している。さらに燃料製造能力については、従来型燃料では概ね充足するが、認証済み燃料設計が限られるロシア型加圧水型炉(VVER)向け、とりわけVVER-1200炉には現在代替燃料の選択肢がなく、ロシアの国営原子力企業ロスアトム社傘下の燃料製造企業TVEL社への依存継続を課題としている。
報告書はまた、原子燃料サイクル全体で供給が特定の国・地域に集中していることを安全保障上の重要リスクと位置付けた。上位3か国がウラン採掘では約4分の3、転換・濃縮能力ではそれぞれ約70%を占めていると分析。さらに、ロシアと中国という2大供給国を除くと、利用可能な転換能力は需要の80%、濃縮能力は約90%にとどまると試算した。短期的には在庫や長期契約で補えるものの、需要増を見据えれば供給源の多様化を急ぐ必要があると指摘した。さらに、原子力発電所は非ウラン鉱物の消費量こそ少ないものの、燃料被覆管に用いるジルコニウムや制御棒に使うハフニウムなど、サプライチェーンが高度に集中し、代替の限られる特殊鉱物にも依存している点もリスクとして挙げている。
本報告書では、U235の濃縮度が8~20%の低濃縮ウランをHALEUとしている。↩︎





